ベトナム初の国産電気自動車(EV)を製造するビンファストは15日、米ナスダック市場に上場した。終値で計算した時価総額は850億ドル(約12兆円)を超え、米ゼネラル・モーターズ(GM)や米フォードを上回った。
ビンファストは米国の株式市場に上場した初のベトナム企業になった。グローバル最高経営責任者(CEO)のレ・ティ・トゥ・トゥイ氏は「米国上場はグローバルな事業拡大の重要な節目になる」とのコメントを発表した。
同市場にすでに上場していた特別買収目的会社(SPAC)「ブラック・スペード・アクイジション」との合併を通じて上場した。15日の株価は37.06ドルで取引を終えた。
ビンファストはSPACと合併後の株式価値を230億ドルと評価していたが、取引初日の時価総額は約3.7倍に急上昇した。中国の比亜迪(BYD)には及ばないものの、GMや独BMWを上回った。
ビンファストはベトナムの複合財閥ビングループが2017年に設立した。19年からベトナム初の国産車を製造し、22年からEV専業にカジを切っている。設備投資や研究開発費などの先行投資が重く、22年12月期の最終損益は49兆ドン(約3000億円)の赤字だった。
EVの成否を握るのが米国事業だ。今年3月から米国販売に乗り出したほか、すでにノースカロライナ州でEV工場の建設にも着手した。ただ、輸出直後にリコールが発生したり、現時点でビンファストのEVがインフレ抑制法による税優遇の対象外になったりするなど、目算に狂いが生じている。
株価急上昇の背景には、市場に流通する浮動株の少なさがあるとみられる。ビンファスト株の約99%はベトナムの複合財閥ビングループなど3社が保有する。いずれの株主もビングループの創業者ファム・ニャット・ブオン氏が株式の過半数を保有し、180日間の売却制限がかかっている。市場に出回る株式が極端に少なく、株価は乱高下しやすい状況にある。
ビンファストが新規株式公開(IPO)に活用したSPACは未公開企業との合併を前提にした「空箱」だ。公開手続きを簡略化できるため「裏口上場」との批判もある。東南アジアの配車大手グラブ・ホールディングスなども活用した。SPAC上場した新興企業には株価が低迷するケースもあり、20年に上場したEVトラックの米ニコラの株価は上場来高値から9割以上も値下がりしている。
地場系コングロマリット(複合企業)ビングループVIC傘下のビンファスト(VinFast)は、インドネシア市場に約12億USD(約1760億円)を投じ、うち2億USD(約294億円)を工場建設に充てる計画だ。地元紙が外電を引用して伝えた。
同社は2024年にインドネシアで電気自動車(EV)の販売を開始し、2026年には工場を建設する見通し。
新工場は年産能力3万~5万台で、北部紅河デルタ地方ハイフォン市の既存工場と建設中の米国工場に続く3か所目の工場となる見込み。米国工場は2025年に稼働を開始する予定。