米政府、中国の半導体高度化を警戒 新型スマホを検証 リンク
米政府は中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が発売した新型スマートフォンの検証を始めた。2019年から強化してきた米国の半導体技術の禁輸で、高速通信規格5Gを搭載した高性能スマホは事実上生産が難しくなっていた。自社開発半導体を搭載し、制裁の影響を軽減している可能性もある。
注目を集めているのがファーウェイが8月に発売した新型スマホ「Mate60Pro」だ。カナダの調査会社・テックインサイツは、ファーウェイが自社開発し、中国の製造受託会社、中芯国際集成電路製造(SMIC)が製造した「キリン」チップが搭載されていると公表した。
回路線幅は7ナノ(ナノは10億分の1)メートルで、5G通信に対応しているという。量産が始まっている「3ナノ」「4ナノ」に比べると2世代前とまだ差があるものの、SMICは先端半導体生産をリードする台湾積体電路製造(TSMC)、サムスン電子に次ぐ微細化技術を進めている可能性がある。
ただ先端半導体の量産には材料や製造装置まで幅広いサプライチェーン(供給網)を構築する必要がある。米国の技術が多く使われ、禁輸対象となっている高度な製造装置なしには効率的な量産は難しいという見方も強い。
米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は5日、「特定の半導体についてはその特性や構成の正確な情報を得られるまでコメントを控える」とし、「もっと情報を得る必要がある」と説明した。
また、スマートフォンのような消費者向け製品などのデカップリング(分断)ではなく、「国家安全保障上の懸念にのみ焦点を当てた一連の技術制限の方針は維持する」と表明した。
あるファーウェイのサプライヤー幹部は「トップ営業をはじめ、ファーウェイの部品確保の力の入れ方はすごい。規制は順守するが、顧客である以上、売ってくれというものを断ることはできない」と話す。新製品の投入には、制裁下でも着々と力を蓄えるファーウェイのしたたかさが見え隠れする。
米連邦議会では現状の対中輸出規制が緩いとの不満がくすぶっている。ファーウェイやSMICへの規制の有効性に一段と疑念が強まりそうだ。
米政府は今年初めから、ファーウェイへの半導体などの輸出を全面的に禁じる措置を検討してきた。いまだに実現しておらず、米議会では野党・共和党から米商務省に批判がでている。
SMICも20年12月に米政府が輸出禁止対象の企業・団体に指定する「エンティティー・リスト(禁輸リスト)」に加えた。回路線幅が10ナノ(10億分の1)メートル以下の半導体を製造するのに必要な米国製品の同社への輸出は原則不許可とした。
企業は米商務省から許可を得れば、輸出が認められる。商務省の運用が緩くなっていたとして、米議会からの突き上げを受ける可能性がある。
ファーウェイは米IDCの世界のスマートフォン出荷台数調査で、20年に四半期ベースで首位となったこともある。米制裁以降、5Gスマホなど高性能機種の生産が難しくなり、一部ブランドを独立させた。23年4〜6月の調査ではサムスン、米アップル、中国の小米(シャオミ)などに押され、6位以下のランキング外となっている。
シナのファーウェイが売り出した5Gスマホ。中に使われた半導体は5G(第五世代)の7ナノだとして注目を集めた。業界の専門家は「似てはいるが、とても7ナノとは言えない」とする意見と、「成功した」とする分析に分かれる。
7ナノは米国のインテルも成功していない。世界最先端の3ナノ半導体は現在、台湾のTSMCと韓国のサムソンしか製造に成功していない。
振り返って、TSMCの熊本工場は28ナノの汎用製品を製造する。日本勢はルネサスもキオクシアも40ナノで、台湾、韓国、米国に周回遅れの立ち位置にある。(笑)
高密度半導体開発を目指すラピダスには、北洋銀行がどんどん融資するだろうが、果たして成功するか。MRJの二の舞にならないか?