アルヴィース・デュオ・ホーリーエイド
わし、結構大変なんじゃよ。これ。ずっとこの喋り方なのはもう慣れたが。必ず卒業させる都合上、常にブランドというものを維持せねばならん。
そのために必要なのが、ろくでなしを輩出しないことじゃ。今んところ悪名を轟かせおった奴はいない。必ず学内で徹底的に矯正する。非道を手段から目的にすげ替えてしまう奴は本当に多いからの。
まあわしは聖導術で生贄とか使っとるから言えるが、こういうことが悪いというのではない。無意味な行為に身を投じるなとも言わん。根源の否定などわしにもできんよ。
わしはまあ、諦めたといえば諦めているかも知らんな。俗世的な感性の方が素晴らしいと思ってしまった。簡単に言えば、魔術師らしい魔術師なんてこっからは出してやらん。絶対に理性の基準は常人のそれに仕立て上げる。
こんなことを言えるのは、わしが既に歪みきっているからではあるが。魔術師としても人としても。だが知識として教えることはできるんじゃよ。理想を語りそれを実現する。それはどんな外道にでもできる。だからそれをしているだけじゃな。
しかし。最近は少し危うい感じはあるの。わしも捻くれ者を拾ってきとるが。
まあ。どうにもならないなら消すかの。
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癌の膿
このクソ学園のいいところは、鍵をかけて眠れることだ。本当に、生きてるってのはそれだけで苦痛だ。死ぬことがそれ以上に苦痛だから避けてるだけだ。
だから寝る。安らかな睡眠と死は同一に近いと思っている。今までまともに寝れたことなんてなかったからな。ここは素直に恩恵に預かっている。
しかし睡眠の困ったところは、ずっと寝てられないことだ。死ぬことを永眠なんて言うらしいが、本当にそうなら永眠してみたいもんだ。
俺は別に死にたいとは思わない。生きてるだけで苦痛だろうが。
絶対に一人では死んでやらない。そう、あの時だって。全部ぶっ壊して価値ある死に方をしてやろうとしたんだ。なのに生き残った。悪運とはこのことだ。
もしかしたら、案外天寿を全うさせられるかもしれないな。それは別に面白くないが。眠るように死ねるというのが本当なら、一番心地いい睡眠になるかもしれない。
ああ、このクソ学園のよくないところだ。授業に出ないと仕置きを喰らう。流石に苦痛を喜ぶ趣味はない。さて、そろそろ行くか。
…気になるのは、前のガキ。自分が一番可哀想なんて顔してるのは人のことは言えないが。
単なる同族嫌悪だとしても。あれだけは不愉快だ。
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家族王キング・アーサー
悲しい知らせだ。この『大騎士王とその大円卓、そして仲睦まじき大家族』に抵抗しようという集団が現れたらしい。みな私の家族となるべき存在。殺したいとは思わない。私がいる限り、すべての円卓の騎士は不死、そうだとしても、私自身が出向いて説得しなければ。
門をくぐり直接その集団の本陣へ向かう。大量のサーヴァント。私に対抗するため召喚されたのか。しかしそれはあくまで付き従う存在。敵の総大将は少年だった。
彼は言う。今の世界を壊さないでくれと。理解できなかった。私は不死と家族愛を伝えるだけの存在なのに。それで壊れる世界など、良いものとは言えないのではないか。
彼は言う。死は決して不要なものでない。敵意も同じだと。それがなくなれば世界は停滞してしまうと。それの何がいけないのだろう。幸せな状態で止まるのなら、とても素敵じゃないか。
問おう。永遠に成長しないことの何が悪いのか。
問おう。悲劇など、憎しみなど、なければ全てが幸せではないか。
問おう。そもそも目的を達成したら消えゆく私を、王の座から引きずり下ろすことになんの意味があるのか。
彼はそれでも意見を変えない。ならば。
問おう。我が聖剣に耐えられるか。