kagemiya@なりきり

泥モザイク市 / 55

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55

年末の難波、道頓堀。
過ぎゆく年を楽しく祝おうと、人混みで賑わう繁華街にて。

「……ぅ、ひっく……」

人混みから少し離れるように歩く、千鳥足の少女が一人。
いつもは仏頂面のその顔は仄かに赤く染まり、固く締まっているはずの口元も、今日はどこか緩んでいる様子。
堅苦しい雰囲気はどこへやら、着崩されたシャツの胸元からは、僅かに肌色が覗いている。

……数時間前、彼女、鴈鉄アズキが所属する武装警邏隊で年内最後の忘年会が行われた。
周りは一回り以上も離れた年上の男性ばかり。そんな中に、娘のような年齢の少女が放り込まれればどうなるか。
あれ飲めこれ飲めそれ食べろ、と。蝶よ花よと愛でられて……そんな雰囲気に流されてしまった結果……
軽い気持ちで飲んだハイボール一杯で、まさかここまで酔ってしまうなんて。

「ふらふらする……あつい……はやく、かえらないと……ぅ、ぷ……」

覚束ない足取り、酩酊が見て取れる表情は、この人混みの中でも一際目だって見える。

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