>> 159
端的に言って、意味不明であった。
今まさに、自分がKBECに通報したはずの不審者が、何事もなかったかのように再び現れたこと。
例えばこれがよく似た双子とかであったなら理解できなくもないが、明らかに、通報したこちらを認識した上で文句をつけてきたこと。
さらには彼が、自身のことを知っているかのように振る舞っていること。
全く理解の範疇を超えたことではある、のだが。
「サンドロ・ボッティチェリ。西洋文化史には疎いですが、確かルネサンス期の画家の方でしたな。御幣島と申します、どうぞ宜しく」
こういう場合、まずは素直に応対して、目の前のことを飲み込むのが一番だ。相手がサーヴァントであると理解したなら、其処には、常識ですぐには考えられないようなことが起こり得る。だから、一々考えすぎてはならない……とは、古いタイプの人間が、この新世界に馴染む為の思考手段である。
「とは言え、如何に芸術の為とはいえ、プライバシーの侵害は頂けませんな。俺の世話になっている、というのも分かりませんが、法規は守られませんと」
通報 ...