ヘビ貿易の掲示板

SS・短編置き場 / 22

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緑の救世主3

冒険5日目。
貿易の旅に出てから、初めてのダンジョンだ。ダンジョンではモンスターが多数生息していると聞いていたが、ここに居るのはミミズくらい。まだやさしい方だろう。ピラミッドでなかったのは残念だが、お目当てのものがそう簡単に見つかるわけはないだろう。今日たどり着いたダンジョンでは、手前に鉄格子があり、奥には財宝が眠っている。なるほど、ここは財宝のダンジョンという訳か。ならば財宝はもらっていこう。昨日警察から賄賂の対価として受け取ったバールで鉄格子を破壊し、中の金品財宝をがっさりと持ち去った。初めてのダンジョン攻略にしてはうまくいった、よしよし。そう思ったとき、背後から声がした。
「緑色の君、もしかしてトレーダーかな?」
振り返ると、奇抜な格好の人間がいた。ダンジョン内で敵ではない人に会うとは珍しい。
「......はい、そうですが。どちら様ですか?」
「私はティムと申します。時空商人をしています。」
「商人?じゃあ売り買いでもするの?」
「いえ、私はあなたの時間を対価に商品を販売しているのです。」
「時間を対価に?どういうことだい?」
「あなたの回りの時間を1日分だけ止めて、その間の生命力エネルギーをいただきます。その対価として珍しい道具を差し上げます。」
そういうと緑色のごついドリルを取り出した。なるほど、これならばダンジョン攻略でいざというときに活躍してくれるかもしれない。
「じゃあ、お願いしてみるよ。」
そういうとティムはなにやら不思議な儀式を始め、気がついたら気を失っていた。

冒険6日目。
気がついたらダンジョン内で気絶していた。どうやら無事に「時間」の支払いができたようだ。約束通り、時空商人ティムから超電磁ドリルを受け取った。
「ありがとうございます。またどこかでお目にかかりましょう。」
そういうとティムは立ち去った。
さて、このダンジョンの宝も収穫できたことだし、ピラミッドの壁画を目指して次に進むとしよう。
途中ミミズやごろつきに絡まれたが、お金や借金の肩代わりでうまく対応し、さらなる地下へと続く階段を進んでいった。

続いては、ロボットトレーダーがいる遺跡にたどり着いた。古代人なのか、壁画に関する情報が得られないか訪ねてみたが、トレードに関係すること以外の問いかけには全く応じてくれなかった。仕方なく、適当に予備パーツ等を購入して、その場を後にした。
その後、重力が弱いダンジョンやなぜかサッカーボールが大量に破棄されているダンジョンなどを超えたが、ピラミッドや壁画に関する情報は得られなかった。
冒険を続けるうち、新聞で見た壁画が、その前からどこかで見たことがあったような気がするようになってきた。果たしていつどこで見たのか見当がつかない。そもそもピラミッドに行ったことすら無いはずなのだ。気のせいだと思うのだが、気のせいで済ませてはいけないくらいには強いデジャブの感覚に襲われていた。しかもその壁画には何か大事な意味があったような気すらしてくるのだ。新聞で見かけた、自分そっくりのヘビの絵が描かれた壁画。それが気になって、ここ数日は夜しか眠れなかった。まあ、ダンジョン内だからあまり関係ないけど。

そして翌日、遂にピラミッドにたどり着いた!

つづく

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