緑の救世主2
冒険4日目。
昨日までの平和な雰囲気からガラリと変わり、砂漠の無法地帯とも呼べるような場所に来てしまった。ごろつきもうろついているし、それを追っているのか警察官も居る。気をつけなければ。
とりあえず酒場に顔を出すことにした。
「はーい、ヘビの坊や。何を飲む。」
「枝豆をひとつ。」
「......うちの裏メニューを知っているとは驚いたよ。ほれ、枝豆、680Gだよ。」
「どうも」
まわりの客はすっかり酒が回っているようだ。ちょうどいい。少しばかりお酒をいただくこととしよう。
一旦酒場を出て、裏に回ってみるとごろつきに絡まれた。
「おいそこのヘビ野郎。痛い目に遭いたくなければ金をよこしな。」
バールや包丁を持ってこちらに近づいてくる。でもこいつらは金に困っているだけに違いない。
「......借金で困っているんだろう?助けてやるよ。」
「なっ!?...」
「図星か。僕が皆の借金を肩代わりしてやろう。だからその武器を置いて欲しい。」
そういうとごろつきたちは涙を流し、お礼を述べながら持っていた武器やバールを僕に手渡してくれた。借金は抱えてしまったが、人助けはいいものだ。
さて、このまま今日の貿易を終えるには少し物足りない。というわけで、人が集まっている酒場に戻ることにした。戻ったときには、酒場のマスターはどこかに行ってしまった。ちょうどいい。置いてあったお酒と自販機で売っていたものをここで転売してしまおう。
「おいしいビールが冷えてるよ。」
「おう、緑のマスター、あるだけ全部売ってくれ。」
「まいど!」
結構な金になった。やったぜ。臨時収入を前にウハウハしていると、背後から鋭い声がかかった。
「そこの緑色の君。」
しまった。警察に見つかった。
「げげっ!」
「ブラックリストに載っているヘビだな。逮捕だ!」
冒険の序盤にして捕まるわけにはいかない。しょうがない。奥の手を使おう。
「ちょっとおまわりさん、これ欲しくない?」
お酒を転売して手に入れた3000Gを見せびらかした。
「な、何のまねだ!?」
「今見逃してくれればそのバールを高値で買い取っちゃうよ~。」
「......わかった。今回だけは大目に見てやる。」
うまくいった。下っ端の警察は激務でパワハラだらけで安月給だから賄賂が簡単に通ると聞いてはいたが本当だった。定価より少し高い程度の値段で上級のバールを入手できた。これがあれば仮に一回くらい捕まっても何とかなりそうだ。
警察が去って一件落着。......よく考えてみると、店主はいない、警察も居ない、客は酒におぼれている......。今ならレジを開け放題じゃないか!
というわけでバールでレジを堂々とこじ開け、賄賂に使った分だけ金を盗んだ。
今日もだいぶ潤った。......順調に罪と借金を重ねてはいるがそれ以上に稼いでいるので問題ないだろう。さて次の街を目指してラクダに乗ろう。そう思ったとき、ふと下り階段に目が移った。こんなところに階段が?今は地上だから、地下に続くのだろう。地下......。もしかしたら新聞で見た壁画にもたどり着けるかもしれない!地下は凶悪なモンスターが住んでいることもあると聞いているが、探索アイテムも回復アイテムもそろっている今なら突破できそうだ。少し怖いが、勇気を出して地下への階段を踏んだ。
つづく
緑の救世主3
冒険5日目。
貿易の旅に出てから、初めてのダンジョンだ。ダンジョンではモンスターが多数生息していると聞いていたが、ここに居るのはミミズくらい。まだやさしい方だろう。ピラミッドでなかったのは残念だが、お目当てのものがそう簡単に見つかるわけはないだろう。今日たどり着いたダンジョンでは、手前に鉄格子があり、奥には財宝が眠っている。なるほど、ここは財宝のダンジョンという訳か。ならば財宝はもらっていこう。昨日警察から賄賂の対価として受け取ったバールで鉄格子を破壊し、中の金品財宝をがっさりと持ち去った。初めてのダンジョン攻略にしてはうまくいった、よしよし。そう思ったとき、背後から声がした。
「緑色の君、もしかしてトレーダーかな?」
振り返ると、奇抜な格好の人間がいた。ダンジョン内で敵ではない人に会うとは珍しい。
「......はい、そうですが。どちら様ですか?」
「私はティムと申します。時空商人をしています。」
「商人?じゃあ売り買いでもするの?」
「いえ、私はあなたの時間を対価に商品を販売しているのです。」
「時間を対価に?どういうことだい?」
「あなたの回りの時間を1日分だけ止めて、その間の生命力エネルギーをいただきます。その対価として珍しい道具を差し上げます。」
そういうと緑色のごついドリルを取り出した。なるほど、これならばダンジョン攻略でいざというときに活躍してくれるかもしれない。
「じゃあ、お願いしてみるよ。」
そういうとティムはなにやら不思議な儀式を始め、気がついたら気を失っていた。
冒険6日目。
気がついたらダンジョン内で気絶していた。どうやら無事に「時間」の支払いができたようだ。約束通り、時空商人ティムから超電磁ドリルを受け取った。
「ありがとうございます。またどこかでお目にかかりましょう。」
そういうとティムは立ち去った。
さて、このダンジョンの宝も収穫できたことだし、ピラミッドの壁画を目指して次に進むとしよう。
途中ミミズやごろつきに絡まれたが、お金や借金の肩代わりでうまく対応し、さらなる地下へと続く階段を進んでいった。
続いては、ロボットトレーダーがいる遺跡にたどり着いた。古代人なのか、壁画に関する情報が得られないか訪ねてみたが、トレードに関係すること以外の問いかけには全く応じてくれなかった。仕方なく、適当に予備パーツ等を購入して、その場を後にした。
その後、重力が弱いダンジョンやなぜかサッカーボールが大量に破棄されているダンジョンなどを超えたが、ピラミッドや壁画に関する情報は得られなかった。
冒険を続けるうち、新聞で見た壁画が、その前からどこかで見たことがあったような気がするようになってきた。果たしていつどこで見たのか見当がつかない。そもそもピラミッドに行ったことすら無いはずなのだ。気のせいだと思うのだが、気のせいで済ませてはいけないくらいには強いデジャブの感覚に襲われていた。しかもその壁画には何か大事な意味があったような気すらしてくるのだ。新聞で見かけた、自分そっくりのヘビの絵が描かれた壁画。それが気になって、ここ数日は夜しか眠れなかった。まあ、ダンジョン内だからあまり関係ないけど。
そして翌日、遂にピラミッドにたどり着いた!
つづく