仏教のお話

03-2-2 妙法蓮華経

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真理とそれを伝えるための方便について説いた経典です。

タイトルの意味

サンスクリットのサッダルマ・プンダリーカ・スートラ Saddharma Puṇḍarīka Sūtra を中国において、訳経僧の鳩摩羅什が、『妙法蓮華経』と訳しました。サッダルマは、「正しい法」。プンダリーカは、「白い蓮華」。スートラ は、「経典」のことです。よって、直訳すれば、正法白蓮華経になりますが、鳩摩羅什は、サッダルマには深い意味があるとして「妙法」と訳しました。また、プンダリーカは、「白い蓮の花」のことですが、「白い」という形容は略されています。

(はす)は、インド原産であり、インドの国花に指定されています。泥水の中から生じ清浄な美しい花を咲かせる姿(出淤泥而不染)が尊ばれたのでしょう。なので、日本における桜のように国民から愛されている花です。特に白蓮華は、別格であり、最高・最上・神聖・清浄の象徴です。

サッダルマ・プンダリーカ・スートラとは、「白蓮華のように最高・最上・神聖・清浄な、正しい真理についての教え」のことです。つまり、蓮華は妙法の比喩として使われています。真理は言語道断であり、不可思議(ふかしぎ)ですから、言葉によって表すことはできません。なので、仏教では、比喩を用いて真理へと人々を導きました。つまり、蓮華という事象によって妙法へと導いているのが法華経です。

よって、法華経では、多くの比喩が使われています。法華七喩が有名ですが、それ以外にもたくさんの比喩によって真理へと導いています。前半では譬喩(比喩)についての説明があります。それは、開譬と合譬(がっぴ)です。開譬とは、譬え話を説くことで、合譬とは、その譬えが何を示し表わしているのかを説くことです。法華経の譬喩品第三では、釈尊が舎利弗に対し比喩について詳しく説いていますから、何度も読んで修得することが重要です。譬喩のことを学ばずに後半の経典を読んでも理解できないでしょう。後半では、合譬についての説明はなされていませんから、自分で読み解く必要があるからです。

譬喩は、方便の一つです。方便とは、ウパーヤ upāya の中国語訳あり、「方法・手段」という意味です。方便については、法華経の方便品第二に詳しく説かれています。

ダルマ太郎
作成: 2023/09/08 (金) 18:52:00
最終更新: 2024/04/15 (月) 21:23:10
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ダルマ太郎 2023/09/08 (金) 21:23:53

インドで編纂されたサッダルマ・プンダリーカ・スートラ Saddharma Puṇḍarīka Sūtra を鳩摩羅什が中国語に訳して『妙法蓮華経』と名付けました。他の方が訳したものもありますが、中国・日本では、妙法蓮華経が有名ですので、ここでは法華経というときは、妙法蓮華経を指すことにします。

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ダルマ太郎 2023/09/09 (土) 15:23:46

日本で法華経というと鳩摩羅什訳の妙法蓮華経のことをいいます。しかし、同じ妙法蓮華経でも、人によって異なった解釈をする場合が多いのが現実です。中国の天台大師智顗、日本の天台宗の最澄、日蓮、宗派、教団によって、それぞれが独自のとらえ方をし、自分の解釈こそが正しいのだと主張します。

正しく法華経を知るためには、原典であるサッダルマ・プンダリーカ・スートラを読むのがよいと思いますが、サンスクリットは難しいので誰もが読めるものではありません。幸いにも、サンスクリット原典を現代語訳した本が出ていますので、それを参考にするのがいいでしょう。つまり、鳩摩羅什の妙法蓮華経とサンスクリット原典の訳を読んで、解釈するのがいいと思います。

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ダルマ太郎 2023/09/09 (土) 15:29:22

日本では、日蓮の影響を受けた宗派・教団が多く、直接法華経を読む人とは解釈が異なります。日蓮の解釈は、独自性が強く、それを否定することもあると思いますが、誹謗中傷するつもりはありません。

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ダルマ太郎 2023/09/10 (日) 19:08:16

新興宗教の団体の中には、法華経は誰もが理解できる簡単な教えだと主張する人がいます。新しい解釈と称して、書物も出しています。確かに柔らかい言葉で容易に法華経を解釈していますが、上辺の内容だけを取り扱っているために、とても法華経の内容とはいえません。無我・無常・縁起・空というような重要な用語も独自の解釈をしているため、法華経だけでなく、仏教も把握することはできないでしょう。

法華経を学ぶのならば、誰かの解釈に頼らずに自分自身で経典を読み、分からない言葉は仏教語辞典で調べながら学ぶ方がいいです。宗派や教団の解釈は、その中でしか通じません。他とも通じるのは経典です。

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ダルマ太郎 2023/09/11 (月) 14:03:22

法華経の方便品第二には、「諸仏の智慧は甚深無量なり。其の智慧の門は難解難入なり」と書いてあります。簡単な教えだとは書いていません。難解難入なのです。難しい内容を無理に簡単にしようとしても限界があります。どうしても仏教を伝えたいと思うのであれば、阿含経などの初期の経典を選べばいいと思います。菩薩への教えである法華経を説いても、一般人には分からないと思います。分かったふりをする人はたくさんいますが、実は上辺しか分かっていません。

そんな法華経を解釈することは私には難しいことです。しかし、これまで30年間学んできましたので、少しは役に立てるかもしれません。できる限り、仏教用語については意味を表していくつもりですが、みなさんも仏教用語辞典などをお持ちに成るとはかどります。

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ダルマ太郎 2023/09/25 (月) 22:07:07

経典は、釈尊の説法をベースにして編纂されたものです。種々の方便(方法)・種々の譬喩(比喩)・因縁(関係性)・言辞(語源)によって巧みに説法をしています。言辞を「言葉づかい」だと解釈する人がいましたが、法華経によく出てくる言辞は、ニルクティ nirukti の訳であり、意味は、「言葉」「語源的解釈」です。法華経原典は、サンスクリットですので、日本人が語源的解釈を解くことは難しいです。漢訳経典だけでは、無理でしょう。サンスクリット原典を読まなくては、言辞については分かりません。

言辞という言葉の意味さえも間違えるのですから、仏教用語の語源など手に負えないのだと思います。方便・譬喩・因縁についても、誤った意味で解釈されていますので注意が必要です。よって、経典を読むときは、必ず仏教用語辞典を近くに置いておいたほうがいいです。仏教はインドで生まれたのですから、言葉の弊害は覚悟しなければなりません。日本の仏教の場合は、インド→中国→日本というように、中国の文化の影響も受けていますので、より難しいのかも知れません。

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ダルマ太郎 2023/09/29 (金) 15:12:49

経典をスラスラと読み、意味を理解できる人はわずかでしょう。漢字ばかりの真読はふりがながついていないと読むことも困難です。漢字と仮名まじりの文語文に書きなおした訓読の場合は、真読よりは分かりやすいものの、単語・熟語が漢字だし、サンスクリットの音写も多いので、仏教用語辞典がなければ歯が立ちません。

経典は、方便・譬喩・因縁・言辞を駆使して説かれていますので、経典を読めたとしても真意を掴むには知識と智慧が必要です。よって、経典を理解するためには、論書や釈書の助けが必要です。論書は、インドの高僧によって解説された書であり、釈書は、中国や日本の高僧によって解釈された書です。

法華経の場合、論書は、世親作の『妙法蓮華経優婆提舎』(法華論)しかありません。法華経全巻を論じているのではなく、序品と方便品の二品だけを解説しています。内容は、かなり難しいです。釈書は、天台大師智顗の『法華文句』『法華玄義』『摩訶止観』、聖徳太子の『法華義疏』、日蓮の『御書』があります。しかし、天台大師智顗の解釈は中国仏教であり、日蓮の解釈は日本仏教なので、インド思想の法華経とは異なりますから注意が必要です。あくまでも参考として読むのであればいいのですが、法華経そのものを読まずにそれらの釈書に頼るのは本末転倒です。天台宗や日蓮系の宗派・教団であればそれでもいいのでしょうが、法華経を知りたければ法華経そのものを読むのがいいです。

残念ながら、インドの法華経を的確に解釈したものがありませんので、自分自身で紐解いていくしかありません・・・