アポかどは用心深い男だ。今回のすいぴらからの命令──9人の刺客を抹殺せよ。これが、バトルロイヤルへの強制参加であることはすぐに見抜いた。
アポかど「──そして、見抜いたからこそ、ここにいる。」
駅を見下ろす位置にあるビルの屋上──ではなく、駅構内にあるスタバ。
あえて、逃げ道の少ない店内で待機しているのは、ひとえにある人物の襲撃を恐れてのことだった。
アポかど「──管理人、シャンてぇあ」
管理人の立場でありながら、その権限を私欲のために乱用する極悪人シャンてぇあ。彼は最強の能力「制空権」を持っているため、空の下では圧倒的に不利である。
もっとも、そのシャンてぇあが今回のバトルロイヤルに参加しているのかは不明だが、用心を越したことはない。
アポかど「ふう──まあいい、いいさ。さすがのシャンてぇあも、長時間戦闘状態でいれば疲弊する。この際、彼に他のプレイヤーを全員倒してもらおうか。僕は1人を殺すだけで生き残れるんだ──」
今はただの客を装って一服していよう──そう思いコーヒーに口をつけたその瞬間──
──轟
アポかど「なっ──」
巨大な爆発音が聞こえ──
──轟、轟、轟、轟、轟
爆発は1度ならず、何度も連続して発生した。タイミングがほぼ重なっていたため正確な回数はわからないが、どれも位置が近い…全て駅構内で起こったものだろうか。
その衝撃か、照明が消えて、構内は暗闇に包まれた。
すでに人々はパニック状態に陥っており、爆発音に続いて悲鳴が鳴り響いている。
アポかど「まさか…」
アポかどは出入口に向かって走ったところ、やはり瓦礫で道が塞がれて通れなかった。おそらく、先の爆発は東京駅構内を封鎖するためのものだろう。
アポかど「おいおいおい──決着がつくまで駅から出るな、ってか?」
スマホをいれてみたが、電波が通じない。周到なことに、ジャミングまで用意されているらしい。
アポかど「クソ、すいぴらの野郎…!」