「博物館へ急行せよとの指令を受け、飛んできたのだが…俺様の他に誰もいないではないか。」
小栗は誤って、『博物館』の本拠地である米マサチューセッツ州ダンバースの廃病院へ向かっていた。
「しかし、突然『博物館』に奇襲をかけるとは。つまるところ、『連合』もやる気になったということか。組織をあげての総力戦となれば、世界情勢が大きく傾く。地図が描き替えられることになるだろう。」
小栗は胸を躍らせながら仲間の到着を待っていたが、当然現れない。痺れを切らした小栗は、単独で廃病院へ接近する。
通報 ...
たった一人で『博物館』に入れると思っているのですか?
(スーツを着た平凡なサラリーマン風の男と赤い脚胖に下げた下襦袢、赤い湯文字を着た女性が立ち塞がる)
「ほう。相手の力を自身のパワーに変換するか。発想としては、俺様の能力に似ているな。」聖なる自壊願望 。ああ、私はなんと罪深い。どうかその慈悲を持って穢れ蝕まれた心臓へ剣を突き刺し、私に止めを刺してくれ──呪詛の一撃。」
小栗が手を下ろすと、辺りの気温が元に戻ってゆく。次に小栗は、懐から鋭利な包丁を取り出した。
「アクセス──
なにやらぶつぶつと呟きながら、包丁を手にサラリーマンへ斬りかかった。
(サラリーマン風の男は包丁の攻撃を胴体で受け止めた。しかし、彼の身体から血が出ることは無く、その代わりにドス黒い異臭を放つ液体が噴出した)
「うわ、汚ねっ」
清潔な小栗は、考えるよりも先に距離を取った。
「その突き刺した包丁は猛毒の刃。心を穢し蝕む呪詛の一撃なのだ。例のごとく吸収すればやがて死に至るだろう。さあ、どうする。」
…………あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!
(サラリーマン風の男の体がドロドロと溶けていきスライムのような質感の巨大な蛇に変化し、小栗に向かって突進する)
「おもしろい力だ。しかし、そこまで原型も留めずに変身されては、遺体が回収できるかどうか不安なところだな。」黄金の騎士 。愛と平和のためならば、私は何度でも立ち上がろう。ゆえに、貴殿をここに喚ぶ。無論、貴殿の答えは知らぬし、認めない。なぜなら私が大義だから──獅子の雄叫び 」
──さて、俺様の使える能力は残り7つ。できれば、脆弱な大人数の兵士で迎え撃ってほしかった。俺様の戦闘スタイルは、殺した敵で補給しながら進むことなのだ。この怪物一匹だけに構ってはいられん。
「アクセス──
小栗が雄叫びを上げると、目の前に中型魔法陣が展開され、防衛隊の方々が召喚された。
「やはり来てくれたのだな、我が友よ。」
……………!
(口から水の弾を防衛隊目掛けて連射する)
っ!!(巨大な盾で、水弾なら仲間を守る。)
...クソ、いったい誰が召喚しやがった!?お前っ小栗かよ!!つーか、ここって...まさか、『博物館』の...小栗ぃ!てめぇ、随分と勝手なことをしてくれたな!
(隊員は、本部に緊急の連絡する。)
ジンです!訳あって『博物館』の本拠地で、敵と交戦になりました!どうしましょうか!?
『なにっ!?一体どういう状況かは分からないが取り敢えずは撤退しろ!まだ決戦の準備は整っていないというのに大事な戦力を消耗する訳にはいかんからな!』
「察するに、情報の行き違いがあったということか。やれやれ、巨大な組織の弊害というものだな。興が削がれた、帰るとしよう。」火焔の芸術家 」
「アクセス──
時間がないので奇妙なポエムはカット。
小栗の頭上に、巨大魔法瓶が現れた。そこから、ゴゴゴゴゴゴゴ...と荘厳な響きを立てながら、エネルギー弾頭が顔を出した。小栗の指ぱっちんとともに、その破壊兵器はミサイルの如く、『博物館』の廃病院へ放たれる。
その隙に、小栗一行は全力で逃亡する。
ちっ、これはちょっとヤバいですね!
(赤湯文字の女性は自身の指を噛みちぎり、その血で魔法陣のようなものを描き、ブツブツと呪文を唱えた。すると巨大な2本の腕が空に出現し、エネルギー弾頭から廃病院を護るための盾となった)