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【SSなのか小説なのか】DearlyDearlyRejection-筐体上の魔術師-【完結】 / 18

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てんびん@the Bisection 2016/05/01 (日) 20:11:27

興業当日。

これも滞りなく進み、両者はリング中央で向かい合った。
片や欧州王者にして女子キックのパイオニア的存在、片や新進気鋭の現役女子高生。狭い会場ながらメーン担当のレフェリーは既に額に汗を浮かべている。
刈谷は小刻みに身を揺すりながら姿勢を見上げ、姿勢は一切眼を合わさない。

トレーナーの奥野が唾を呑む。
(クソ、いつもどおりか…)

姿勢が目を合わさないのは臆しているからではなく、彼女の流儀である。
姿勢鈴はゴング直後まで試合相手と一切のコミュニケーションを取らない。話さないし、目も合わさない。
それはある程度実戦というシチュエーションを想定しての戦い方である。
彼女が事前に準備を立てたのはでタイトルマッチとデビュー戦のみ、現時点では姿勢にとって刈谷は「いきなり現れた何者か」と想定して初めて対等となる相手であった。

「スカしてないでこっち見てくださいよ」

「私語は謹んで」

挑発する刈谷をレフェリーが諌める。しかしこの様子を狭い会場に集まったファンは見逃さなかった。

「なんか言ったぞ」
「姿勢無視じゃん」
「アイツいっつもあんなだよな…」

俄かに盛り上がる中でタイトルマッチのゴングは鳴った―

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