『必要悪は必要なのか?神ならば不要にはできないのか?』
彼女は答えた。
『君は神は何でもできると思っていないか?神は確かに全知全能だ、故に無知無能だよ。全知であり全能だから思考は停滞する。それは無知であり無能であるのと同意なのさ。だから君に相談だ。』
彼女は一拍置いてこう言った。
『完全でも不完全で完成でも未完成で最高でも最低で進化でも劣化で強化でも弱化でそんな不老不死に、なってみないか?』
俺は刹那も掛からずそれに答えた。
『必要悪は必要なのか?神ならば不要にはできないのか?』
彼女は答えた。
『君は神は何でもできると思っていないか?神は確かに全知全能だ、故に無知無能だよ。全知であり全能だから思考は停滞する。それは無知であり無能であるのと同意なのさ。だから君に相談だ。』
彼女は一拍置いてこう言った。
『完全でも不完全で完成でも未完成で最高でも最低で進化でも劣化で強化でも弱化でそんな不老不死に、なってみないか?』
俺は刹那も掛からずそれに答えた。
「本当にあの国を滅ぼすのですか?」
彼女―――ハイエルフのヒョウ―――がそう問いかけてきた。
「仕方ないだろう?あの国がこの世界で唯一、自衛以外の為の軍を保有しているだ。滅ぼさなくてはならない」
「ですが…」
たしかに滅ぼすというのは気が滅入る行為だ。だが、世界の平和のためには必要なことなんだ。
俺は仲間達とともに彼国、アルシェント帝国へと足を踏み入れた。
「では今回の作戦についてもう1度説明する。今回の作戦はS級冒険者167名、災害級魔族237名+αの計524名での作戦だ。内容はアルシェント帝国の皇帝の殺害と軍の解体が主だ。ここまでで誰か質問は?」
「無いようだな、では次だ。今回の作戦はS級冒険者は南門、災害級魔族は北門、+αは西門から突入して貰う。東門は予め工作員が爆破し使えないようにしているからそこから逃げられることは無い」
スッと誰かが手を挙げた。
「聞きそびれたのだが+αとは誰がいるのだ?」
「それは俺が応えよう。ビルディアン王国の大罪機関、【暴食】のウヴァ、【傲慢】のアールグレイ、【憤怒】のディンブラ、【色欲】のキャンディー、【嫉妬】のキーマン!聖カールネイティ国の勇者達、【実現】のタツヤ・カミシロ、【逆境】のコノシロ・サンダイ、【響音】のサキ・フジシロ!魔国の四天王とこの俺!魔王ディストピアだ!」
ざわめきが広がる。大罪機関、聖国の勇者、四天王と魔王、どれも1人で世界を滅ぼす事も可能と言われる者達だ。無論、S級冒険者や災害級魔族も1人で一軍に値すると言われている、だが格が違うのだ。その力は頼もしくもあり恐ろしくもある諸刃の剣。いつ仲間割れを起こすかもわからないそれが仲間になるという事は歓迎しにくいというのが当たり前だ。
「まあこうなるとは思っていた。だから俺たちとお前達は別々の箇所を担当しているんだよ。他にもう質問はないか?」
誰も手を挙げれなかった。
「そうか、じゃあ行くぞ!野郎共!」
ボトリ
何かが落ちる音、魔王は全力で後方に下がった、それは肉体の可動域を破壊するような動きだった。
「ほう、流石は魔王ですね、あの攻撃を避けるとは」
目の前には頭部のない死体と縦に裂けた頭部が無数に無造作に置かれていた。そしてそこには1人佇む燕尾服姿の老紳士の姿があった。
「申し遅れました、私は外務省、【拳闘士】のドーンと申します。以後お見知りおきを」
「ガイムショー?いや、外務省か?そうか、そういう事か!なるほど、お前がそうだとは思えない、と言うことは皇帝か?それにしてもこれで俺も合わせて5人目とはな。」
魔王ディストピアが何かを呟く。
「なにを言っているのですか?」
「なぁに、こっちの話だ。それでは【魔王】ディストピア、もとい【千殺万滅】のフソウ・カズラエ、いざ尋常に、勝負!」
「じゃあ行くぞ!10月22日の一打入魂 !」
魔王の手に突如、バットが出現する。それをドーンに向けて大きく振りかぶる魔王。ドーンと魔王は10m離れていたはずだがドーンがまるでバットに当たったかのように大きく吹き飛んだ。
「これが俺の武器、千殺万滅だ。持ち主の記憶に応じてその形を変え、能力も変わる。一打入魂 はその中でもトップクラスの破壊力を持った武器だ。これの直撃を受けて立ち上がれたものは存在しない。」
瓦礫に埋もれるドーンにそう話しかける魔王。するとガラガラと音を立てドーンが立ち上がった。
「なに?」
驚愕する魔王。何故なら一打入魂 の能力はダメージを与えたものの完全な破壊である。その一撃はドラゴンをも粉砕する程だ。
「いやはや、驚きましたよ。いきなり攻撃してくるものですから。では改めて自己紹介をさせていただきます。【拳闘士】――――もとい【拳闘糸】のドーン・ソレチュナーゼ、いざ尋常に勝負といきましょうか。」
「ハッ!」
拳と鎖の連撃が魔王に次々と襲いかかる。
「チッ!7月10日の蜘蛛の手 !」
魔王の手に握られたバットが形状を変え緩やかなカーブを描いた先端が鋭利な撥二つと4対のロボットアームへと変化し無数の鎖と手足による攻撃をさばく。
「なかなかやりますね、ならこれはどうですか?無限爆鎖!」
ドーンが1歩下がり今までの倍以上の鎖を四方八方から襲いかからせる。避けることは不可能な上に爆鎖は触れると爆発する能力が付与されているため迎撃することも容易くはない。当然、魔王はそれの直撃を受けてしまった。
「ククク、死神聖母 をも倒した無限爆鎖は如何です?これに耐えれるのは大臣達と私の師匠、それと皇帝閣下ぐらいのものです。」
爆炎によって巻上がった砂埃に背を向けドーンは職場へと足を進めた。
「9月15日の赫満月 !」
砂煙の中から一条の赤い光線が放たれドーンの心臓を穿った。
「な…に?」
煙の中から出てきたのは土汚れは多少あるが全くの無傷の魔王ディストピアの姿とレイピアよりも細い刀身をした曲剣だった。
「赫満月 、この武器は少し特殊で、色々とできる武器なんだが対価として生物の魂が必要だ。今回使った攻撃無効化と光線に必要なS級冒険者にして約500人程だな。」
「そうですか、私がここで殺したS級冒険者とあっちで【天気予報士】が殺した災害級魔族の魂を喰ったのですね?貴方それでも魔族の王ですか?」
「………3352万2451人、これだけの魔族が飢えて苦しんでいるんだ。ここの土地を奪う為に300人には犠牲になってもらうしかなかった。」