prologue
――振り返れば、楽しい時もあり、険しい道もあった。
けれど、素晴らしい旅だった。
故郷に帰ってきた今でも、時折目を閉じて、冒険の日々を思い出す。
色付き文字
色付き文字
その度に、白衣を脱ぎすて、スポーツウェアを着ようと試みる。
その度に、リュックを引っ張り出してボールやら薬やらを一気に詰め込む。
色付き文字
色付き文字
暫くして、私は椅子に凭れ掛かる。
『旅をしたい』と言う心に反し、体は震えだす。
体は、もう追いついていないのだ。
老いぼれた体を必死に動かそうとするが、骨は軋み、口は震え、腹の奥の方から何かが蠢き、何かが込み上げてくる。
ふと、机の上に置いてある、セピア調の古ぼけた写真が視界に入る。
あぁ……
私は、何かに蝕まれ、頭痛が絶えない頭を必死に回転させる。
節目というのか、潮目というのか。
とにかく、今が"それ"なのだ。
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The first chapter journey
「ふっ、ふっ!」
俺は、どでかい段ボール箱を小走りに運んで行く。
重いんだよ……何が入ってんのか、ってくらい。
しかも、中から声がするし。
「じいちゃん! 運び終わったぞ!!」
「おぉ、ゼレナー。ご苦労じゃったな。」
この人は俺のじいちゃんで、オーキド・ユキナリって言うんだ。
有名な学者で、世界にも通用するほどの技術を持っている。
「それでは、メラーを呼んできてくれ。」
「はぁ!?」
メラーは俺の幼馴染で、今日、俺と一緒にポケモンを貰う、いわば『ライバル』だ。
「まー、分ったよ。呼ばないとポケモン貰えないんだろ。」
「当り前じゃよ。」
じいちゃんは、そう、笑顔で言い放つ。
……
行ってきますか。
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