「ねえ?げんざぶろうさん?」
狙撃手はカピバラに話しかけた。
「なんや用か?」
カピバラが言葉を発した。
「コードネームなんていらないと思うんだけどさ?サトシ君が決めたんだよね?なんでだれも反対しなかったと思う?」
「そりゃ敵のハッカーに通信を傍受されやん用にするためちゃう?ワイはただの台座やからそこらへんはようわからんわ」
「そう……」
少女はカピバラに乗りながら辺りを警戒する。肩にはオウムとハムスター、背後にはアライグマを載せながら歩を進める。
「ここでええやろ、11の方向およそ400m先風向きは南南西に1m弱ってところやな」
向けた銃口の先には黒コートの人間が一人いた。キーボードを叩いて何かをしているようだ。
「ふぅ………This is my rifle. There are many like it, but this one is mine.」
少女は小声で歌を唄う。
「 My rifle is my best friend. It is my life. I must master it as I must master my life.」
照準は人間の後頭部。
「My rifle, without me, is useless. Without my rifle, I am useless. I must fire my rifle true. I must shoot straighter than my enemy who is trying to kill me. I must shoot him before he shoots me. I will …」
何回しても人を撃つ感触だけには慣れないし慣れたくもない、そう思いつつ。
「My rifle is my best friend. It is my life. I must master it as I must master my life.」
だがここで奴らを殺さないと世界が終わる。
「My rifle is human, even as I, because it is my life. Thus, I will learn it as a brother. I will learn its weaknesses, its strength, its parts, its accessories, its sights and its barrel. I will ever guard it against the ravages of weather and damage as I will ever guard my legs, my arms, my eyes and my heart against damage. I will keep my rifle clean and ready. We will become part of each other. We will …」
もしかしたら自分たち以外の人間は滅びることを願っているのかもしれない。
「Before God, I swear this creed. My rifle and myself are the defenders of my country. We are the masters of our enemy. We are the saviors of my life.」
だけど最低でも自分と仲間達は滅びることを良しとしない。
「So be it, until victory is America’s and there is no enemy, but peace!!」
これはエゴなのかもしれないがそれで結構!人間は自分勝手なものだ!
「ここはアメリカじゃないけどねっ!」
引き金を引き銃口から銃弾が発射される。それは吸い込まれるように黒コードの頭に当たり、石榴の花を咲かせた。そうだれもが思った。
狙われた黒コートはまるでそこに攻撃が来ることをあらかじめ予想していたかのような動きで銃弾を避け手に持った拳銃でこちらに撃ち返してきた。本来なら飛距離が足らず当たらないはずの弾丸はまるで予め知っていたかのような動きで跳弾し加速しこちらの眉間へと吸い込まれた。背後の壁には赤色の花が咲き手に持っていた狙撃銃は力なく音を立て崩れた。