柿崎だったり
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2018/05/31 (木) 22:23:33
ひとり視線のきつい家に残されてしまったぼくは、仕方がなくゲームでもすることにした。あんな話を聞かされたあとでは、外へ出て写真を撮る気も起きない。ふと、当の祭りについて先輩に言われるがまま付いてきた自分が全く無知なことに気がつく。
ぼくは思い切って家の人に声をかけた。
「こちらは先輩……さっきの彼とはどういう関係のお宅なんでしょうか」
まずはそう言うと、家主のおじいさんは本当に困ったような顔をして、
「わからん」
と首を振った。
「お祭りがあるってきいたんですけど、何をするんです?」
「なんでそんなことを」
「だってこれじゃ失礼ですよ。せめて一緒にお詣りくらい」
そう頼むと、一息置いて話してくれた。
「……ありゃ、死者を現世に戻すための儀式だ。お面を被って踊っているうちに、いつのまにか死者が紛れ込んでいる。神様のおかげで死者が戻ってくると。でもな」
おじいさんは遠い目をして言うのだ。
「たとえ神が居たとしても、都合よく自分のことなんて助けてくれないって実感したよ」と。
そう言って、おじいさんは亡くなった奥さんの写真を見せてくれた。
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