しはこう「あー、やっと学校終わった。疲れたなー」
しはこう「ずっと似たようなことやんないといけないといけないとか、ほんと人間ってめんどくせぇな。いっそ何かになれたらいいのに。まあいいや、帰ろ」
そう言って俺は家路を歩き出した
~その途中~
謎の男「少年」
しはこう「はい?あなたは誰ですか?」
謎の男「そんなことはどうでもいい。ところで、現在に飽きた上で、君は何かになりたいと思ったことはあるか?」
しはこう「(...は?なんでいきなりそんなことを...?何か胡散臭いけど話だけ聞くか..)」
しはこう「はい...でも何故それを?」
謎の男「実はな、そんな君みたいな人のために私はとある「薬」を提供しているんだ。それも"タダ"でな」
しはこう「で、その"薬"とはどんなものなんですか?」
謎の男「なに、そんな難しいものではない。内容は簡単だ。この"薬"は想像したものになれるというものなんだが、ただしルールがある」
しはこう「ルール...?」
謎の男「あぁ、そうだ」
男から出されたルールは2つ。
・物理法則を完全に無視したものにはなれない。もし物理法則を無視したものを想像すれば体は壊れ、ズタズタに引き裂ける
・1度なったら元の姿に戻ることはできない
しはこう「そうですか」
謎の男「どうだ、飲んでみる気はないか」
しはこう「正直信用できないですけど、まあものは試しというのでもらっておきますね」
謎の男「ほらよ、水はいらねぇからな。じゃあ頑張れよ!少年!」
右手に薬を握りながら、俺はその場をあとにした
~人気のない場所~
しはこう「貰ったはいいがいざ何かになれるとなると、迷うものだな..」
しはこう「そうだ、ハシビロコウになってみよう!一度空を飛んでみたいと思ったし、好きな動物だし」
そう言って俺は薬を体に流し込んだ...
しはこう「なんか体に馴染んでいくのを感じる。それに何か中で膨らんでいくのを感じるような...」バタッ
~2時間後~
しはこう「(うわっ...寝てたわ...)」
ん!?ん!?自分の手を見ようとし、自分の顔の近くに持っていった手の゛はず゛のものを見て俺は驚いた
しはこう「(すげぇや!ほんとになりやがった!せっかくこんな体になったんだ、やれることやってみるか)」
大きな翼を広げ、大空へはばたいた。
しはこう「(ヒューッ!)」
耳元で鳴る風の音、目の前に広がる景色、とにかく目の前に見える全てに興奮した。
しはこう「(すごい、ほんとに空を飛んでるぞ!俺は飛んでるぞ!)」
しはこう「(このままあそこまで飛んでみるか)」
~夕方~
しはこう「(さて、そろそろ帰...そっか俺はもうこの姿から戻れないんだった。どうしよう、困ったなぁ...この姿じゃ家帰れないし喋れないし...)」
~数時間後~
しはこう「(そうか、ヒトであることを捨てるってこんなにも重いことだったんだ...あまりにも考えが足りなかった。今まで繰り返し行ってた場所、やってたこと、意味があってやってたんだ。でも俺はそれに気づけなかった、でも今更後悔したって戻ることはできない。)」
そう考えていると、近くで強い水の流れの音が聞こえた。覗き込んでみるとその音は推定30m下から流れていて、水は強く、それもかなり強く岩に打ち付け、少しずつ岩を削っている。
しはこう「(そうだ、このまま戻れないなら...)」
魔が差した時にはもう遅く、体は空中に投げ出されていた。
しはこう「...」グシャァ
....
謎の男「あぁ、まただめだったよ。」
そう電話相手にひとり大型鳥類の羽を掴み猫を抱きかかえながら呟き受話器を元の場所に戻した。