ミバch創作コミュニティ

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エマ 2017/10/30 (月) 19:04:08

「ごめんなさい」
イツキの口癖。それに対して俺は「死ね」と言う。
会社でのストレスは年々増していった。髪は抜け、医師には鬱と診断された。
趣味の無い俺は、ストレスが溜まる度に妻に当たっていた。ストレスの増加と共に、暴言、暴力は増えていく一方だった。
「死ね、死ね、死ね!全てお前のせいだ!死ね!目の前から消えろ!」
「ごめんなさい、ごめんなさい...」
初めの頃はライカは部屋で布団にくるまり耳を塞いでいたようだったが、いつしか俺はライカにも当たるようになっていた。
「痛い!ごめんなさあぁい...ごめんなさい...!」
「お前が!出来損ないだから!俺が!こんなに!責められるんだ!死ね!首を吊れ!」
「ひっ、ごめんなさい...!うぅ...ごめんなさい...」
俺が暴力を振るっても、二人が家を出ていくことは無かった。俺はそれを良いことに料理の文句を言ったり、娘の部屋を荒らしたりしていた。

ある日、帰ったら、嫁と娘が並んでリビングで首を吊っていた。まるで大きなてるてる坊主のようだった。
俺はそれにムカついて、二人の背中を蹴った。重い音がして、ライカが落ちた。イツキは落ちなかったので、また蹴った。
足元には、二人の遺書が置かれていた。イツキの遺書には「ごめんなさい」と、その後長い文が書かれていたがイライラして破り捨てたので覚えていない。ライカの遺書には、「ごめんなさい」とだけ、下手くそな文字で書かれていた。これにもイライラしたので破り捨てた。

・・・・・・・・・・・・・・・

足元には、まだあの時の遺書が落ちている。ふと、破れた紙に赤い文字が見えた。敗れているので途切れ途切れである。気がつけばそれを無心でパズルのように組み合わせていた。

『パパ、だいすきです』

...ああ...

俺はおもむろに、冷めたカップラーメンに刺さったままの箸を抜き取り、首に刺した。
赤い血が飛び散り、だいすきの文字は見えなくなった。

おわり

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