それにしても、二人とも遅いな。二人とも夜には強い方らしいが、ライカはまだ5歳だぞ。こんな時間まで連れ回すのは、親としてはどうなんだ?
帰って来たら沢山叱ってやらないとな。あ、だがライカは早く寝かせなきゃならない。まだ小さいからな。
でも、もし二人がサプライズをしようとしていたら?俺は怒っていいのだろうか。よくないだろうな。そこは俺にも、良識がある。
もう3分経っただろうか?時計がないので時間が分からない。まぁ真っ暗で見えないのだが。
そこには特にこだわりが無いので、適当な時間で蓋を開ける。
箸を取り出す。ようやく食べ物が食える。腹を満たしたいという欲望のまま麺を摘み口へと入れる。
「...ぅゲェッ!」
思わず口から麺が飛び出た。胃からものが込み上げてくる。ただ何も食べていないので出てくるものは何も無く、酸っぱい胃酸がすこし口から垂れた。
とてつもなく不味い。不味いと言っても、これは、腐っているような、カビているような。
口の中に異臭が残る。これはなんだ!不良品か?
あわてて電気を付けようとする。が、付かない。何故だ?
仕方なく机の上にあった懐中電灯を使用し、カップラーメンの容器を照らす。
2015年3月19日。
おかしい。大分前の日付だ。
完璧主義のイツキは、消費期限を切らすことはまず無い。あったとしても、すぐに捨てる筈だが。
こんな見えやすいところに置いておくことは今まで無かった。
おかしい。
気がつけば俺は新聞を漁っていた。2015年2月8日、2015年3月5日、2015年2月13日...
急いで冷蔵庫を開ける。冷たくない。消費期限、2015年6月8日、2015年7月14日、2015年...
おかしい。おかしいおかしいおかしい。
ふと、後ろでグシャ...と柔らかいものが崩れるような音がした。反射的にそちらを懐中電灯で照らす。
「あ...」
さっきのやつだ。
「そっかぁ」
家族は数年前、リビングで自殺していた。