仕方ない、腹が減った。むしゃくしゃしている。
ギシギシと鳴る階段を降りる。リビングに行くが、家族はいなかった。
「おい、イツキ。何処に行ったんだ?返事しろよ、何で無視するんだ。」
真っ暗な部屋、電気も付けず、たぶんそこに居ると思うイツキに声をかける。
「おい」
グシャ、一歩踏み出したら何かを踏んでしまった。それを拾い上げ、手で感触を確かめる。
なんだか、柔らかくて、どろどろとしている。あまり良い触り心地ではない。
その場に捨てた。グシャ、と同じ音をたてる。その場に何かが飛び散る。汚いなあ。
また一歩踏み出すが、先程と同じ物が落ちていたようで、踏んでしまう。
イライラしてきた。イツキ、ちゃんと掃除しているのか。
また踏むと厄介なので、手でそれを隅に寄せる。ぐしゅぐしゅとした手触りで、時折硬いものも手にあたり、本当に汚い。気持ち悪い。
隅に寄せ終わったようなので、立ち上がり、机のある方へと歩む。確か机の上にカップラーメンが置いてあった筈だ。残念だが、俺は料理はできない。
お湯を沸かそうと、ヤカンを持ち蛇口をひねる。
ちょろちょろと、水が出てくる。やけに水圧が低いが、特には気にならない。
ヤカンに水がある程度溜まったので、それを火にかけようとコンロを付けた。
ただただぼーっとする。
イツキ達は本当に何処へ行ったのだろう?
そういえば、明日は俺の誕生日だ。もう歳をとるだけなので特に楽しみでもないが、結婚してからは嫁や子供が祝ってくれるようになったなぁ。誰にも祝われず過ごした数年前は思うよりも重く、子供の頃を思い出して涙が出そうになったっけ。
イツキとライカのやつめ。もしかして俺にサプライズを仕掛けようとしてるのか?そう思うと、なんだか照れくさくなった。
「明日が楽しみだなぁ」
呟くと同時に、ヤカンの水が沸騰したようだ。ピーピーうるさく泣いている。ライカが産まれたばかりの頃、毎晩こうやって泣いていたなぁ。今では多少生意気な口をきくが、それも成長したという事だ。
カップラーメンの蓋を開け、お湯を入れる。またそこから3分待たなければいけない。俺は待つのは苦手だが、こればかりは仕方がない。