「私はまだまだラーメン初心者だからね」
誰に言い訳するわけでもなくペラペラとアルメアは並べ立てる。隣にいるハルナに向けたセリフとも言えない、独り言もどき。
「曰く、一年食べつけるまではミニラーメンを注文しなければならない。
非合理的な理屈だと思うが郷に入っては郷に従えとの格言もある。それが店のルールなら従うさ」
……それはアルメアがラーメンを食べたことがないと聞いたカグヤの吹き込んだ嘘だった。
アルメアが信じているのか、それともふざけているだけか、表面上からは読み取れなかったのでツバメはスルーを決め込んでいたが、あいにくと今回ばかりは本気で信じていたアルメアはこうして毎度毎度ミニラーメンを注文している。
今のセリフはようやく疑いが鎌首もたげてきたアルメアがそれとなくラーメン上級者っぽいハルナに出したSOS信号だったりした。
しかし、そんな事情を知らずに聞いているハルナにすればまったくもって意味不明なセリフでしかなかったのだが。
>> 70
「おっと」
ハルナの言葉にアルメアは軽く眉を上げた。
「はじめまして。自己紹介が遅れたね。私はアルメア・ギャレット、ご察しの通り奏金の直営だ。そういう君は……皇ハルナさんだったかな? 活躍は耳にしているよ」
>> 73
声が耳に届く。アルメアはそちらを一瞥し、それとなく手袋を外した。金の指輪が品のない光を反射する。
(神坂シヅキ……独立派の中心人物か。奏金のリストに入っていたはずだ。……意向に従うなら捕縛しておくべきかもしれないが……)
小さく鼻を鳴らし、アルメアはやれやれと首を降った。今日は大晦日。仕事納めは終えている。働く必要はない。
「こんばんは美しいレディ。第一印象で決めました。結婚を前提としてお付き合いを申し込みたい。……お返事をいただけるかな?」