アルス/XXXI:紅白会場
2019/12/31 (火) 20:59:58
特設のステージで、男が吠える。
飛び上がるように激しく、浮遊するように夢見心地のエクスペリエンス。
彼を知らぬ者の多くは話題性だけのアイドルと言い、彼を知る者の全てはKAWAIIと言う。確かにKAWAIIとしか言いようがない。
この舞台に選ばれた彼の実力は、本物だ。
自然と拳に力が籠る。それは感動ゆえか、あるいは。
しかして今は駆け出すべきではない。今の自分には何よりもやるべき使命がある。
「彼谷パルヴァライザーさんの『飛行型完全体』ありがとうございました!!」
時は大晦日。このステージはこの地域に古くから伝わる祭事―――紅白歌合戦の中心にある。そして、司会の大役を自分が務めているのだ。
「さて、そろそろ中間発表の時間であるな!今の段階では……白組が優勢である!皆の者ありがとう!」
ここで折り返し。しかしまだまだ気は抜けない。今年を駆け抜けた流星の如きアイドル達を代表し、自分はここに立つ。
側に立つ己の騎士は、今は紅組の司会……この一夜だけはライバルを名乗らせてもらいたい。
その気負いが眼差しに宿っていたのか、パーシヴァルもまた本気の視線を返す。
今年もあと僅か。1年間の想いを込めた、熱唱を此処に!
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