kagemiya@なりきり

泥モザイク市 / 157

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───────バザーの一角。
「安いよ、安いよ!舶来品の魔術礼装だ! 旦那!一つどうだい? これなんて魅了の魔術が掛かってる逸品だ、なんなら御禁制の品も…」
威勢の良い声を通りかかりに掛けていた魔術礼装売りの男はふと立ち止まっていた一人の男に話しかけた。
「主人、御禁制と言ったな?」
男は店主の前で右手を胸の前に突き出すと、手を開きながら右に振った
それを見た者が魔術師であれば、その行為が低級の認識外しの魔術を解いた動作であることに気付いただろう
「KBEC御所外苑部小隊だ、申し開きがあるなら聞こう」
男、としか認識出来なかった店主の顔からさっと血の気が引いた。
上から下まで真っ黒いスーツに腰にぶら下げた二刀、その髪はオールバックにまとめ上げられ、左目を瞑っている。
男の名は黒脛刃矢。治安維持組織KBEC御所外苑部小隊の小隊長を勤める魔術使いだった。
「KBECの旦那!? 待ってくだせぇ! 御禁制ってのは誇張した売り文句でさぁ!魔術使いの旦那なら見りゃ分かるでしょう!?」
慌てた店主は商品を刃矢の前に差し出す。
「さて、どうかな。一度押収して屯所に……」
刃矢は商品を手にとって冷たい目でそれを良く見ると店先に並んでいる商品を一瞥した。
「旦那ぁ!勘弁して下さいよ! 今日の売上0なんてなったらうちのかーちゃんに殺されちまう!」
半泣きの店主を見て、思わず刃矢の口元が緩んだ。
「冗談だ、違法性がないのは見れば分かる。だが、周りや旅行客が勘違いしたら困るのでな。商売気があるのは大いに結構だが、過激な誇張表現は止めておけ」
「そうします……」
店主はため息を付くと肩を落とした。
「お騒がせしました、旅行客やお客様の皆さん!この店はKBECが保証する安心安全な魔術礼装の店です!きっと店主も善良でサービスもしてくれることでしょう!」
それを見た刃矢は深呼吸をすると、周囲に聞こえる大きな声で、事の成り行きを見守る野次馬に向かって叫んだ。
「邪魔したな、商売は全うにやれよ」
店主の返事も聞かず立ち去る刃矢。
興味を引かれた野次馬達が客に変わるのを横目に刃矢は人混みへと消えた。

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