すっかり変わってしまった。世界改変以降、この街を見る度に、そう思わざるを得なかった。
渋滞でもなければ、車で名神高速を一時間も飛ばせば、簡単に京都の都市部に来れたものだ。駐車場の問題こそあったが、少し気が向いたから観光に、ということだって、不可能ではなかった。
それが今ではどうだろう……。この古都が維持し続けてきた美観は、新たな王として君臨するサーヴァント達によって、様変わりしてしまった。左京と右京に分裂し、興行ですらない恐ろしい戦乱がこの街では続くようになった。
消えていく。全てではないかもしれない、守られるものがあるかもしれない。それでも、空間に蓄えられた歴史は、確実に物理的な媒体を失っていく。それは、何か途轍もなく恐ろしいことのように感じられる。
だからこそ、こうして自分は、此処に足を運ぶのだ。数少ないアクセス手段である鉄道網も、戦乱の中ではまともに機能せず。それでも、自らの足を使い、或いはレンタカーを借り、何度でも。全ては、少しでも形あるものを未来へ残す為。
……その為に、今日もこの御苑に来たのだが。
「……???」
顔馴染みの古物商(盗品商店を兼ねる)で、幾つかの文書や破棄された行政文書を買い取った帰り。傷ひとつつかぬよう厳重に梱包した上で鞄に入れたそれらを抱え、ついでにバザーでも見てみようかと立ち寄ってみれば、妙な人物が目に止まった。
不自然にふらふらと、時に身を隠すようにしながら、何かを追いかける仕草を見せる。手元にあるのはスケッチブック。何というか、少々正体を疑う笑みを浮かべるあの人物は、さて、どこかで見たことがあるような。
戸惑いながらも、彼は密かにKBECの姿を探すことにした。どう見てもあれは不審者である。
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