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「お二人とも、あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します」
「あの。あけましておめでとうございます、って、なんですか?」
当惑しているスバルを他所に、一旦挨拶を貰った二人に返事をする。姿を消したトウマが押し付けていったお年玉を、不思議そうな顔をして見つめるスバルに、ツクシは、言葉を続けた。ぴん、と人差し指を立て、少し得意そうな顔をして、朗々と語りあげる。
「今この瞬間、この街は新しい年を迎えた。そのことを、『年が明ける』っていうの。で、それがおめでたいから、みんなで一緒に喜んでるんだ」
「あたらしいとし。こよみが、ひとつすすんだことが、“おめでたい”?」
「そう。何でかって言うと……そうだな」
ぽん、と、ツクシが手をスバルの頭に載せる。お年玉を持っていない方の手でそれに触れるスバルをまっすぐ見て、笑った。
「君が元気でいてくれること。1年間、こうして生きる時間を重ねたこと。それが、おめでたいの」
───最初は、迷子の子供サーヴァントだと思っていた。契約が何かの理由で切れたはぐれなのかも、と。でも、そうじゃなくて。本当は、
「だから───あけましておめでとうございますって。今年も宜しくお願いしますって。そう言うんだ」
それが、本当に嬉しいことだから、と。
聞いていたスバルも、意味を自分の中で噛み砕いて、納得したのだろうか。少しずつ、柔らかな笑みを浮かべて。
「なら、ハービンジャーも、おかえしします。ハービンジャーも、マスターとすごしていることが、とてもうれしいです」
「あけましておめでとうございます。ことしも、よろしくおねがいします」
す、と、手が差し伸べられる。それを、ツクシも握り返す。
「「これからも、よろしく」」
───新たな年を迎えた「天王寺」。人々の喧騒は未だ止まず、その到来を、共に喜ぶ声が響いている。