アルメア・ギャレット:天使ラーメン
2019/12/31 (火) 23:33:49
「闇夜」カカカカ。その権能の効力は状態の分離と保存。擬似的な不眠・不食の加護を与えるアルメアの奥の手の一つである。
箸を繰るスピードが上がる。
異界常識たる悪魔に常識は通用しない。「満腹になった」というステータスそのものを外部に隔離するカカカカこそがアルメアがこの勝負に見出した勝算であった。
────負ける勝負はしない主義でね!
更に速度が上がる。あくまで優雅に、食事を楽しむ余裕さえ見せながら開始から数分で既に大山の三分の一を彼は崩しきっていた。
大人気ない。と、先程のペンルィならそう指摘するだろう。まったくその通り。一族の秘奥たる悪魔を持ち出してまで勝とうなどと大人気ないにも程がある。
されどこの場に彼の妹たちが、或いはアルメアの命を狙うネーナ・リーベルスがいれば、アルメアのとった手段が正しいとそう言うだろう。なぜならシヅキが馬鹿にした指輪は魔術師リーベルスの一族が積み重ねてきた千年を越える研鑽の果てにあるもの。それを貶められたまま引き下がるなど魔術師の端くれたる彼らに許されはしない!
食事スピードに耐えかね、風圧で木枝が落ちるように呆気なく箸が折れた。アルメアは指輪から不可視の鎖を伸ばし割り箸を引き寄せながら中空で両断する。その間コンマ1秒。一瞬すらも挟ませずに食事が再開される。
開始から6分。絶滅危惧種の底意地は、意地悪くも全力を賭して怪物を残り1/6にまで削り取っていた。
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