20XX/○○/○○ 迷宮の日
梅田地下廃棄街で、女の子を見つけた。私よりも小さくて、どこか舌ったらず。……レムちゃんのことを思い出して、少し胸が痛んだけど、それは仕舞っておく。ともかく、保護者も兼ねるサーヴァントと、複雑な構造のせいではぐれてしまったのだという。
「神戸」難民でここに暮らしている人なら迷うことはないだろうから、多分、そもそもここにきたこと自体が何かの間違いだったんだろう。すぐに、都市情報網での迷子情報を探しつつ、地上に連れて行くことにした。
見た目は弄っていないというから、多分年齢は12歳前後。それくらいの女の子の迷子の情報を、と思って調べていたけど、どうにも見つからない。
本人曰く、「梅田」の都市戦争サテライト施設で待ち合わせの予定だった、というから、取り敢えずそっちに連れて行くことにした。んだけど。
何故か、施設に近づくに連れて人がどんどん増えてきて、女の子に対する目線も多くなっていって。嫌な予感もしたから、近くまで送り届けたら帰ろうとしていた。そしたら、彼女のサーヴァントだという男の人が、丁度そこにいた。
……気づかなかった。その姿は、「梅田」都市軍の中継映像で見るそれとよく似ている。フェリドゥーン。シャー・ナーメの大英雄。邪竜を滅ぼしたもの。でも、確か前に見た時は、その姿は女性のものだったような。
疑問符を浮かべながらも、女の子の名前を聞いたらもっと混乱した。ティールって、それも都市軍の選手の一人だったはずだ。でも、こんなに小さい子じゃなくて、私よりも大きな女性だったはずなのに。
私が混乱する中、ひとまずお礼を言って、ティールちゃん……さん? は、フェリドゥーンさんと一緒に立ち去った。結局、詳しいことはそのまま聞けずに終わってしまったんだけど、後から都市情報網で調べ直してみたら、意味がわかった。
ティールさんは、サーヴァントを憑依させて戦っている。私がフェリドゥーンさんと、あるいはティールさんと思っていたのは、サーヴァントを憑依一体化して肉体を変化させたティールさんの姿だったんだ。
……確かに本来の姿はあの小さな姿なのかもしれないけど、それならそうと早く言ってほしかった。結構必死に探したけど、何もヒントもなかったし。
あと、14歳ってプロフィールに出てきたけど。……本当の姿があんな状態だっていうのは、ちょっと心配かもしれない。