20XX/○○/○○ エスクロー
今日は……何だろう。犯罪といえば犯罪で、芸術といえば芸術。そんなものを見た。
私が遠出をしている間に、難波の方で落書き事件が多発していたらしい。
たまたま今日は、その落書きをしている場所の近くを通りかかったんだけど。何というか、とても……アーティスティックな格好の女性と出会った。
ストリートアート、というらしい。センセイが文化の一端として、苦笑と一緒に紹介してくれた、街中の落書き。っぽい絵。
法律に照らすと、あれは明確な違反行為らしいけど、それに芸術的価値を見出す人もいると。今日会った人は、まさしくそういうタイプの人だったと思う。
リコと、その女性は名乗った。何でも、普段から、時間になっていた落書きのようなアートを描いているのだとか。
たまたまその現場を目撃してしまった一般市民としては、多分都市情報網で通報した方が良かったんだろうけど。私自身後ろ暗いものもあるし、他に見ている人も通報した様子がない。
そもそも、本当に絶対ダメだというなら、カレンシリーズは間違いなく行動を起こす前に止めている。少なくとも、都市にとって致命的なことではない、ということ。
それならいいか、と思って、彼女のアートを見ていたけど、本当に凄かった。スプレーだけであんな絵が描けるんだ! と、びっくりしっぱなしだった。私はあんまり絵は得意ではないから、なおさら。
最終的に書き上がったのは、都市戦争にも出ているナンバくんを、面白おかしくデフォルメしたもので、思わず笑ってしまった。皆も笑いながら、拍手を送っていた。
でも、そのすぐ後に警邏隊が来て、あっという間にその集まりも解散しちゃったんだけど。まだ絵を見てみたくなっていたから、ちょっと残念だった。
そういえば、後でもう一度同じ場所を通ってみたら、サーヴァントらしい少年が樽に収まって何故か寝ていた。あれはなんだったんだろうか。
追伸。後から調べたら、あの女の人が描いた絵は、エスクローと呼ばれる集団の作品の一つだということがわかった。
作品としては良かったと思うから、できればもう一度見たいけど……彼らの作品は、しばしば建物などの管理人に取り壊されてしまうので、あまり長く残らないのだとか。残念。