kagemiya@なりきり

影見ツクシの日記帳 / 16

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20XX/○○/○○ お客さん
珍しく。本当に珍しく、我が家に直接お客さんが来た。
来たのは詩遠さんと、そのサーヴァントである小川さんで、前から聞かせてもらっていた古い民話の別バージョンが見つかったということで、それをわざわざ知らせに来て、それから朗読もしようかと言ってきてくれたのだった。
勿論、私はとても嬉しかったし、何もない家なりに、お茶くらいは頑張って出して、お茶請けはなかったけど、それを補えるくらいのおもてなしもしたつもりだ。
何より、詩遠さんとも小川さんとも、物語の話をするのは楽しい。そうしてくれるのが、私にとってもとでも喜ばしいことなのはそうだった。けど、どうしても、少しだけ気分は晴れなかった。
……なんとなく、センセイの心配している顔が透けて見える気がする。あまり顔を合わせないようにしていたからか。たまに、センセイの方から、こうして知り合いの人伝に様子を探りに来ることがある。
こんなふうにするくらいなら、直接見にきてくれてもいいのに。センセイも、私のことなんか、人に見てきて貰えばいい、とでも思っているのだろうか。
そりゃあ、私からそうし始めたんだから、センセイにそうされても仕方がない。……でも、そうされてみると、ちょっぴり辛い。
なんて。そんなことを考えていたのが見抜かれてしまったのか、詩遠さんに気を遣われてしまった。「あなたが会いに来ないのを心配するのと同じくらい、センセイもあなたを気にしてますよ」。そんな感じのことだっただろうか。
小川さんも、あまり器用な言い方ではなかったけど、似たようなことを言ってくださった。その心遣いは、ありがたかった。
あぁ、でもダメだ。何か言いたいことはまだあるけど、まとまらない。嬉しいけど、寂しいような。なんだろう。すぐには言葉に起こせない。
……眠ろう。明日、この心を、少し整理してみたい。今のままだと、私自身もよくわからないまま。そんなのは、嫌だ。

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