20XX/○○/○○ 変な人
今日はうねりさんからの仕事。とはいっても、人を逃がすことじゃなくて、何かの荷物の受け渡しだった。
「危ないブツじゃないから大丈夫、子供にそんなひどいことはさせない」、なんて言ってたけど、あの人は必要なら私になんでもさせるだろう。もしそれをしないとしたら、そうしないことで私から搾れるものがあるからだ。
……ともかく、今回は本当に変な仕事ではなくて、梅田の地下廃棄街……厳密にはその奥の迷宮に行くのであろう、探索者向けの店の人への届け物だった。
表のルートでは運べない貴重な品を運んでほしい、ということらしくて、受取人の人——宍戸さん、だったかな。私よりも幼く見える人だったけど、あれは多分見た目だけだ——あの人は喜んで受け取っていた。
それと、そこからの帰りしなに、水木さんに会った。サーヴァントのアサシンさんと一緒。珍しいところで会うな、なんて、笑いながら手を振ってきたりして。
アサシンさんも、こんなところにまでわざわざご苦労様ね、と、呆れながらではあるけど声をかけてくれた。
……実を言うと、この人たちとは、今はあまり会いたくない。私を見たままの子供扱いしてくるのが、センセイみたいで。挨拶くらいならともかく、ずっと話をするのは、少し気が滅入る。
だから、この時もすぐに離れようとはしたんだけど、たまたま行き道が一緒で、暫く話をするようなことになった。
当たり障りのないことしか、話していないと思う。今季の都市戦争がどうだとか、あの選手はこうだとか、あるいは、このダンジョンでこんなことがあったとか。水木さんの話に、相槌を打つような感じで。
結局、都市表層に出てくるまで、そんなような話をずっとしていた。でも、それでも私は、あまり喋りかけることはなかった。
多分、気を遣ってくれてる……のかな。私みたいな子供が、一人で妙なことをやっている。それを気にかけているのかもしれない。
でも、そんなことを言われても、私はどう反応を返していいのか分からない。これは私が選んだ道で、私のための道で、それから、少なくとも今は、私が役に立てる道だから。やめるつもりはない。
どうやって、私は向き合えばいいんだろう。水木さんも含めた、いろんな「大人」の人たちと。