共通シナリオ『幕開け(routeB-3)』2/3
2020/08/07 (金) 01:13:30
「牽制にしても随分と緩い手だな。 躊躇っているのか? 魔術師らしくもない」
ゆらりゆらりと左右に揺れながら、なるべく相手が動揺する言葉を選択して投げ掛ける。
「……っ! ハイビスカス!Prune-air!」
魔術師らしくない、黒瀬の言葉に思わず父の遺言がリフレインした。
動揺を隠すために次の手を撃つ。ハイビスカスを三本束ねての電撃。
エネルギーは避けられても光の速度の電撃は避けられない。
だが、その一撃は思考にリソースが避けなかったとはいえあまりにも大雑把に過ぎた。
百合の視界から電撃に打たれる筈の黒瀬が消えた。
電撃により、辺りは明るい。百合の目にははっきりと黒瀬が写っていた左右には避けてはいない。上に跳んだと言うなら気づく筈だ。なら……
「下!?」
すぐさま視線を下げる。
電撃という明かりにより生まれた校舎の影、そこに潜んだ黒瀬は極端に腰を落とした這うような姿勢で百合へと迫っていた。
既に目の前にいる。迎撃は、間に合わない!
「遅いぞ、栗野」
いつも通りの抑揚のない声が、百合の耳に届いた。
下から突き上げる右の掌底、寸前で気付いた百合は身を捩り避けようとする。
掌の端が百合の顎が掠り、脳が揺さぶられた。
脳震盪で意識が遠退き、膝から崩れ落ちる。
瞬間、なにかが百合の体を浚った。
通報 ...