①
■の命は苦痛と共にあった。
もう何度体験したか分からない、地の獄をひたひたと歩いていく作業。
赤。黒。まるで粉砕機に押し込まれたみたい。■がぐちゃぐちゃのどろどろになって押し潰される。
赤。黒。まるでミキサーに注がれたみたい。■がぐちゃぐちゃのどろどろになって掻き混ぜられる。
赤。黒。まるでコンロに焚べられたみたい。■がぐちゃぐちゃのどろどろになって沸騰する。
歩みが苦しい。呼吸が苦しい。鼓動が苦しい。生きることが苦しい。
鉄砲水に押し流される他愛のない命のよう。水底と濁流の間で磨り潰されてぺしゃんこにされる。
押し寄せる真っ黒い波濤の全てが■を叱責し、弾劾し、非難していた。
お前が生きているのはおかしい。お前だけ生きているのはおかしい。お前は終わっていなければならない命だ。
ああ。それに対して他に何が言えるというのだろう。
すみません。ごめんなさい。のうのうと生を繋いでいて申し訳ありません。
身を平たくし、縮こまらせて、それがどうにか過ぎ去るのをただ待つ■の姿はとうに骸のようだった。
痛い。それでも生きようとする肉体器官の全てがその罵りを浴びて苦痛を叫ぶ。
血の一滴一滴までもが砂に変わるかのようだ。こんなに苦しいのなら、いっそ生など欲しくはない。
けれど■を否定するその痛みこそが、痛むことで■に己の生を実感させていた。
ここは終わりのない地獄の底。命あることを罪とする■の刑場。
―――それでも。このユメには不思議なことに、終わりがある。
■にとって最も苦しいことは痛みではなく、その終わりだった。
どうしていつも、その終わりの果てに、この手には美しい一輪の花を握っているのだろう―――
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