召喚:ランサー
2020/07/17 (金) 09:38:11
「……覚悟なら、してる。」
「聖杯戦争は児戯では無いぞ。」
しかし再びランサーは、私の根底を突くように覚悟を問い、かえって決意を揺るがすような発言を繰り返す。それは私の不安定な足元を、躊躇なく崩そうとするような冷ややかさを持っていて。
……そしてそれは、私に少し苛立ちを抱かせるには十分だった。
私はずけずけとランサーの目の前まで歩いて行って、顔を近付けて宣言する。
「……いい?私はこの日の為にずっと準備して来たんだよ。私に資格が無いって言うつもりなら、マスターとして許さないから。」
ランサーは目を少し開いて、変わらずこちらを凝視していた。しかし、その中に含まれる感情は……”驚き”が強かったように見えた。
「む……失礼した」
これは少し意外だった。
今までの態度から、つっけんどんで歯に絹着せぬ人物だと判断しかけたのだが。割合、話は分かるようだ。
少なくとも今のちょっとした諍いで、悪人の類では無いらしい事が確かになったのは収穫だっただろうか。
「そう……分かればいいけど。」
「それでランサー、あなたはどこのサーヴァントなの?」
「……ああ、私の真名は……」
そこまで口にして、ランサーは口を噤む。
何かしら思案しているような一瞬の間を置いて、彼はこう言った。
「……いや、明かさない方が良いだろう。不都合になるかも知れない」
「不都合?」
「ああ。万が一露呈すれば、此方が不利になる」
成程。年齢が若いから、実力不足と判断されたのだろうか。
未だに道に迷っているような私の本質を見透かされているのならば仕方ないが、そう簡単に真名を教える事は無いということか。
……明らかにナメられてる。それなら、こっちにも考えがあるんだから。
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