kagemiya@なりきり

第五次土夏聖杯戦争SSスレ / 40

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ぐったりと横たわったあの人は、最後の力を振り絞るように。
私に向かって、今でも夢に見る言葉を告げた。

“──────百合。私を赦してくれ。”

“……お前には……魔術など、教えるべきではなかった……”

“お前は、お前だけは……”

“幸せに、生きてくれ─────”

…それが最後。
その時のあの人の顔は、今まで私が見てきたどんなあの人の顔とも違うものだった。

あの人の事は好きではなかった。
魔術師として優れていたが、父親としては優れていなかった。
彼は師として私を教えたが、父としては愛してくれなかった。
ただ、それがあの戦争のせいなのだ、と言う事は知っていた。

だから、耐えてきたのだ。私も魔術師として、この人の後を継いで立派にならなければならないのだと言い聞かせてきた。
でも。あの時、あの人は確かに─────

私の、父だった。

「……父さん………父……さん………!!」

流すつもりのなかった涙が溢れてくる。
漏らすつもりのなかった嗚咽が湧き出てくる。

何度あの人に呼び掛けても、返事はもうなかった。

「─────私、どうしたらいいの─────」

あの人はそれまで魔術師だった。それでも彼は最後の最後で、魔術師としてではなく父親として言葉を遺した。
だから、その瞬間に私の進む道は隠れてしまった。

それから色々、紆余曲折あって私─────栗野百合は成長した。
父が戦いに赴いた日から、十八年。
この時が来て欲しいわけではなかったけれど、気持ちは知らず逸っている。

あの人は何故、私にあんな言葉を遺したのか。
それを明らかにしてくれるのは、あと少しで始まろうとしている、そのイベントだけだろうから。

「ごめんね、父さん」

私にとってあの人は、未だに魔術師だった。

2009年
7月4日

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