「」ゲミヤ
2020/06/13 (土) 15:29:24
───────2009年、火蜥蜴学園2年C組教室。6月下旬夕方
数日掛けた中間テストを終えた教室ではどこかやりきったような弛緩したような空気が流れていた。
そこに扉の開く音。
夕礼の時間ぴったりに現れた担任、黒瀬正峰は教壇に付いた。
「起立、気をつけ、礼、着席」
日直の生徒の言葉にクラスが儀礼的な挨拶をすると黒瀬は生徒を一瞥して口を開いた。
「では夕礼をはじめます。中間テストも終わりも明日からテスト休みだ。もう一ヶ月もすれば夏休みなので、気が緩んでいるものもいるが、休みを楽しんでも決して気を緩め過ぎないように」
と、そこで黒瀬にしては珍しく咳払いを一つ。
「休み中に繁華街に行くのもいいが、気をつけないとエアマックス狩りやGショック狩りに合うからな、はは!」
空気が固まる。
決して黒瀬が冗談を言った事にではない、これは何を言っているのかという困惑だった。
「あの……先生……エアマックスってなんですか?」
そこで勇気を出した生徒の一人、松山茉莉がおずおずと手を上げて黒瀬に問い掛ける。
嘘……だろ……
黒瀬は思わず崩れ落ちた。
まだ自分は若いと思っていた黒瀬にとってはじめてのジェネレーションギャップだった。
「あら、黒瀬先生どうしましたか?そんなに落ち込んで?」
「ああ、いえ大した事ではありません。……凍巳先生、エアマックス狩りって知っていますよね?」
「……えあまっくす?」
「……すみません、忘れてください」
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