「」ゲミヤ
2020/06/13 (土) 13:54:53
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───────1991年、長野県某市。7月。
「やっと見つけた!」
ショートカットの女性が繁華街の裏手で大声を上げ、通行人が首を傾げながら通り過ぎる。
「………また、あんたかよセンセー」
女性に声を掛けられた男、少年はウィンドブレーカーのフードを外すとため息をついた。
「また私よ、って言うか私以外に気に掛けてくれる美人教師いるの、黒瀬君?」
「すっげー自信、センセー鏡見たことある?」
女性は少年、黒瀬のセンセー、先生であるらしい。親しい様子で話すとやれやれと言わんばかりに路肩の自販機の前に座り込んだ。
「で、君は学校には来ない!家にも帰らない!なにやってるわけ?」
「別に関係ねぇだろ、誰にも迷惑かけてねぇ、なんか飲む?」
座り込んだ黒瀬に怒りを隠せない先生。
その言葉に耳を貸すつもりはないのか、黒瀬自販機で飲み物を買った。
「要らないわよ、迷惑掛けてないっていうけどね、君。そのお金どうしたの?」
「拾った」
もう一度座り込むと缶コーヒーのプルタブを開け、口を付ける。
今使っている財布は街中金を持ってそうなチンピラからスったものだ。
自分の起源からしてどうせ証拠は出てこないし、捕まらない。
(……苦っ、良くこんなもん好き好んで飲んでるな)
粋がってブラックコーヒーを買ったが、口に合わなかった。
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