>> 11
「そう……ですか。俺もそうなんだ。気付いたら、此処にいた」
少し、困らせてしまっただろうか? そうだとしたら申し訳ない。
考えれば、俺がこうして意味も理由もわからずに列車に乗っていたんだ。同じような人がいると考えるのが自然だった。
相も変わらず、思慮が浅い自分に嫌悪感が奔る。だが、今は自己嫌悪に浸っている場合じゃない。
分からないという状況は変わらないが、今俺と同じ状況にいる人──────言ってしまえば、仲間が出来たのは、非常に安心する状況と言える。
「俺は…石沢啓哉と言います。学生をやっていて……。差し支えなければ、貴方のお名前を聞かせてもらえますか?
もし協力できれば、此処が何なのかわかるかもしれません」
>> 12
そう提案した時だった。誰かが近づいてくる足音が聞こえた。
扉の方に視線を移す。するとそこには、人影がいた。また1人、乗客がいるという事を確認できた。
この人や俺と同じように、理由もわからずこの列車に迷い込んだ人なのか、あるいは────────────。
どちらにせよ、俺にとって+になるというのは間違いない。前者ならば仲間が増えるし、後者ならば見識が増える。
そう俺は考えて、その人が扉を開いてこちらの車両に足を踏み入れると同時に、声をかけた。
「貴方も、この列車の乗客ですか?」
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