スティーブが走り出すのとほぼ同時に、アクティブを囲むようにして、地中から無数の棘が飛び出した。
スティーブ「ッ!」
間一髪のところで、不意討ちを回避する。
それは1m程ある漆黒の...杭、だろうか。目を凝らすと、腐った木であることが確認できる。
メガゴルダック「
それは緑豊かなフィールドを作り出すとか、巨大樹木で相手を拘束するだとか、もっと生命力に溢れた異能だったはず。
ああ、それがどうして──
アクティブ『何故、俺ガ...コンナニ醜イ...』
やめろ喋るな、お前の声は気持ち悪いから。
メガゴルダックはスティーブに目を合わせて合図した。
奴の攻撃は、地中から繰り出されるものだ。幸い、この辺りの空間は広く、壁や天井からの攻撃を心配することはない。足元にだけに気をつければ良いのであれば、片方が囮となる隙に、もう片方が上から奇襲すればよい。
10年にも及ぶ師弟関係は、伊達ではない。スティーブは作戦の意図を瞬時に汲み取ると、すかさずアクティブの背後に回った。
メガゴルダック「えっ」
スティーブはすでにクラウチングスタートの態勢に入っていた。どうやら、師匠を囮にするつもりらしい。
メガゴルダックは嘆息しつつ、渋々アクティブに向き直る。
メガゴルダック「──アクティブ、聞こえるか! ああそうだよ、俺が餡蜜だ!」
アクティブ『ッ!!!』
餡蜜というワードに、アクティブは強い反応を示した。磁石で引っ張られた金属のように、メガゴルダックに顔が向く。
憎悪と憤怒が入り交じった負のオーラの激しさは一層増し、メガゴルダックに突き刺さる。
メガゴルダック「...ぬぅッ」
なんて禍々しい怨念だろう。その風を浴びているだけで、体中に痛みが走り──
メガゴルダック「これは...!」
そこでメガゴルダックは、ある異変に気づいた。
アクティブ『脹、壊、血塗、膿爛、青瘀、噉、散、骨相焼』
一方スティーブは、邪悪な呪詛を唱えるアクティブを見て、好機と判断した。
勢いよく跳躍すらと、真上からの垂直落下、持ち前の怪力でアクティブを粉砕せんとする──
スティーブ「らっしゃあああああッ!」
メガゴルダック「待て──」
制止するには遅すぎた。スティーブは予定通り、アクティブの頭に拳骨を落とし──粉砕されていた。
スティーブ「いぎッ...ぬぅがァァァァァッ!?」
スティーブは右手を抱えながら転がり落ちると、絶叫をあげながらのたうち回った。
血塗れのその手は黒ずんでおり、まるで、腐っているかのような──
メガゴルダック「やはり...!」
これではっきりした。奴の真の異能は、物体の腐食──あの痛風は、離れていながらも体を蝕まれていたということか。
スティーブ「な...ぜ...」
そうだ、すると新たに疑問ができる。なぜ死角にいたスティーブの攻撃するジャストタイミングで、その力を強めたのか。
メガゴルダック「まあ、こういうのはおよそ相場が決まってるもんだ──」
第三視点から戦闘の様子を眺めていたとしたらどうだろう。こちらとあちら、どちらの攻撃もくまなく把握することが可能なはず。
メガゴルダック「隠れてないで出てこいよ!」
すると、暗闇から浮き出るようにして──
シャンてぇあ「ククク...カハッ、ハーハッハッハッハッハ!!」