柿崎だったり
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2018/02/23 (金) 20:25:24
実家の近くに火葬場の跡があった。
といってもいわゆる"出る場所"のような噂はなく、怖がられるどころか、むしろ残された小さなお地蔵様に自分からお参りをしに来る人も居た。
それでも、屍を焼く場所である。何か思念や幽霊でも残っていそうなものだ。
そう思い、盆の休みに霊感の強い先輩をそこに連れて行くと、驚いた顔をして言うのである。
「多すぎる」
先輩の言うところによると、死者はこういった死と関わりのある場所を好む。霊自身が、そこが死と関わりがある場所だと思っているからだ。
それにしても、多すぎると言うのである。
すると、軽トラが近くに停まった。中から出てきた老人はお地蔵様に手を合わせると、すぐに軽トラに乗って去っていく。
それだけのために車を停めたのか。
「なるほどなぁ、それでこんなに」
先輩が勝手に納得している。
「もし、自分が死んだらどこに行きたい?」
天国とか、そういう話だろうか。答えに悩んでいると、先輩が言った。
「自分に優しくしてくれるところ……じゃないかな」
もしかしたら、ここで手を合わせる人たちも本能的に理解しているのかもしれない。
それが死後に、自分の安らかな居場所になるのだと。
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