雑貨屋「……いや、勝負は……やってみないとわからないんだ……」
聖剣の絶大な力を頭でようやく飲み込んだことにより、一周回って冷静になる雑貨屋。
雑貨屋は興奮して乱した気を深呼吸を繰り返すことで落ち着けると、厳しい顔つきをしながらも再び剣を構えた。今は何としても聖剣の奪取を優先したかった。ここで取り乱していても何も得られない。
アポかど?「勝てるつもり……というよりは勝たなきゃいけない、か。まぁ、お前がそこまで強迫観念に駆られる理由もわかるさ。お前の性格から考えれば、だけどな」
雑貨屋「お前に僕の何が解るというんだ……」
アポかど?「ああ、わかるさ。お前の掌を通して、お前の中の色々なものをみせてもらったよ。ほんとは今の俗世がどうなっているのかの情報収集をするだけのつもりだったんだが、……ついつい面白くて他のものも見てしまったよ」
雑貨屋「貴様ァ……!」
アポかど?「……ゆうれい、だったか」
雑貨屋「ッ!!!」
アポかど?「綺麗な子じゃないか。その上、お前に献身的だ。男にとってはこれほど理想的な女性はいない」
雑貨屋「そんな、訳がない……!」
アポかど?「ああ、そうだな。お前にとっては彼女は理想から程遠い。むしろ、疎ましかろう。故にお前は彼女を嫌う。その最たる理由、それはお前より優秀だから」
雑貨屋「ああ……そうだよ……っ」
雑貨屋は、ヤケクソ気味にアポかどの言葉に頷いた。もはや、それを否定したところで何の意味もないから。
雑貨屋にとって、彼女は女神だった。
可憐な容姿、雑貨屋にだけ優しくしてくれる一面を持ち、そして、あらゆることにおいての類い希なる優秀さ。
彼女は彼の憧れそのもの。もしかしたら、それは今でも変わらないのかもしれない。
かつての雑貨屋は、今のように強気な態度を取るような少年ではなかった。物事の覚えは悪く、体はひ弱で足はノロマ。少し動くだけでドジをやらかす程にどんくさかった。常に誰かに助けてもらい足を引っ張らないと生きていけない人間、それが彼だった。
そんな彼を守ってくれる存在こそがゆうれいという少女であった。