魔人「ぬ?殺気━━」
雑貨屋「遅すぎるぞ、馬鹿め!」
ズパッ
魔人「くっ」
気配を消して魔人の背後に回って、ある程度離れた距離から放った《飛燕斬》は魔人の右腕に当たって切断した。
雑貨屋「チッ、外れたか」
本来、雑貨屋は首を切断するつもりで放ったのだが、相手の反応速度は予想よりも速く、間一髪身体をひねることで即死は避けられてしまった。結果的に、奇襲として、半分成功で半分失敗といったところか。
といっても、この程度はまだ雑貨屋も想定内なので、取り乱すことはない。
急に攻撃されて混乱しながらも、魔人はなんとか雑貨屋からの追撃に対処する。残った片手から、真っ直ぐにこちらに飛んできた雑貨屋に向けて魔力球を放つ。
雑貨屋は勢いを一切緩めずめず、体勢を低めることでそれを避ける。そして、二度目の《飛燕斬》を放った。
背中から翼を生やし、飛行の体勢になっていた魔人は上に飛び上がることでそれを避ける。
魔人の翼は、通常の鳥が持つ翼とは違い滑空ではなく風属性の魔力で風を直接操ることで飛行する。なので、その飛行は自在であり、鳥より速い。
飛び上がった魔人は、雑貨屋を踏み潰すべく真上から急降下する。
それを雑貨屋は横に跳躍することで避ける。魔人の踏みつけをくらった地面が砕け散る。食らえばひとたまりもないだろう。
再び飛び上がった魔人は、再度の踏みつけ攻撃を雑貨屋に繰り出した。
継続的にくる魔人からの踏みつけ攻撃を避け続ける雑貨屋。怒涛の連撃に反撃する余地すらない。しかし、最初は紙一重の回避だったが、攻撃を見切り始めた雑貨屋は次第に余裕をもって回避するようになる。
そして、完全に攻撃を見切った雑貨屋は、魔人の攻撃に合わせてカウンターを決める。降ってきた魔人に対して、雑貨屋自身も跳び上がってすれ違い様に魔人に斬撃を浴びせたのだ。雑貨屋のカウンターによって、魔人は残ったもう片方の腕と片翼を切断される。
魔人「……人間ごときがぁ!」
魔人は口ではそう言ったが、目の前の人間に勝つことは不可能だと考え、撤退することを決める。
魔人は地面に着地すると同時に背を向けて駆け出した。
雑貨屋「ふはは、逃げろ逃げろォ!」
あれほどのダメージを与えたのだ。逃がす訳がない。
雑貨屋「ん?」
だが、雑貨屋はあることに気付く
雑貨屋「……あっちの方向はまずいなぁ」
魔人が惨めに逃げ出す姿に愉悦を抱くのも一瞬。一転して雑貨屋の心境は焦りへと変わる。
魔人が逃げた方向は、アポかどがいる方向であった。
雑貨屋も急いで駆け出した。