「やべぇ……こっちくるんじゃなかった………」
俺は目の前の光景を見てそう呟く。実際目の前の地獄絵図に比べれば麻薬中毒者の温床の方がまだ幾分かマシなような気がす
る。
写真でしか見たことはないがそれはさながら軍艦島の様な廃墟だった。そこに一人の老人がいた。そしてその周りには無数
の飛行機やらヘリコプターやら車の残骸が無造作に置かれていた。其れも今さっき壊れたばかりの奴だ。肉片が飛び散り呻
き声が聴こえる。だが所々で小さな爆発が起きている。恐らく燃料に引火したのだろう。劈く爆発音が響くたびに呻き声は
聞こえなくなる。
だがそれでも老人は微動だにしなかった。そして火の粉や砂埃が舞い散る中何故か老人には一つの傷も無く一つの汚れも無
かった。
「ン?おいっ!そこのお主っ!儂に近付くと危ないぞ!今すぐ回れ右して立ち去れい!」
老人がいきなり話しかけてきた。だが俺は北に行かなければならない。先輩が言ってたのを思い出した。アズマオウは先輩
の友人らしく先輩の名前を出せば住む場所と安全位は確保してくれると言っていた。遠くの親類より近くの他人という諺が
あるがその他人が殺人鬼だったり麻薬中毒者の時は遠くの親類の方が幾億倍かはマシだ。
俺は一歩足を前に出す。その瞬間目の前に何かが降ってきた。慌てて数歩後ろに探す。降ってきたものを見ると小さい、本
当に小さい熱を持った小石だった。
「だから近づくなと言ったのだ。今回は運良く隕石が当たらずに済んだ様じゃがな。今度は助かるかは分からんぞ?」
どうやら目の前の老人の仕業らしい。ならば障害は排除するまで、先輩なら絶対そう言うし俺にヤレと強要する。
俺は途中で襲い掛かって来た強盗から剥ぎ取ったUZIを老人に向かって連射する。だが、老人に当たりそうになった銃弾は全
て弾かれまだ生きていたと思わしきヘリなどの操縦士に当たり絶命させた。