コンコン
「呼ばれました、白比丘 早紀です。」
壁にぶつかってからは特にこれといったアクシデントも無く無事に学園までつき、学園長の部屋の前まで到着する。
「入れ」
部屋の中から50代前後のしわがれた男の声が響く。その声を聴いて失礼します、と言い部屋の中に入る。部屋は黒を基本とした落ち着いた感じとなっており幾つかの調度品は素人の早紀から見ても高価なものだとわかるものだ。
「私は富士山学園長代理、
「は、はい、突然で悪いのですが俺に適正がある、というアーティファクトとは何なのですか?」
緊張の所為か丁寧に話しているつもりなのかどうかもよくわからない発言をする。文人はよくある事なのか特に気にも留めずにその発言にこたえる。
「うむ、お主に適正があるアーティファクトとはこれだ」
そう言って文人は立派な机の上から一つの皿に盛られた『料理』を取り出す。何かのフライの様だ。
「…………すみません、何かの冗談でしょうか?」
「いや、これがアーティファクト『八百比丘尼の肉』だ。流石にそのまま喰うのは抵抗があるだろうからこちらで調理させてもらった」
八百比丘尼、人魚の肉を喰い不老不死になったと言われる伝説上の人間だ。
「え……?と言う事はそれは人肉の………」
「そう言う事になるな」
「えぇ………」
少し気分が悪くなったのか口元を手で押さえ一歩後ろに後ずさる早紀。
「……まあ人肉を食べろと言われて気分が悪くなるのも仕方のない話だな。だがこの肉を喰いそしてアーティファクトとお主の肉体が適合したらお主は晴れてこの学園の生徒となれるのだ。今までの厳しい生活から抜け出せるのだぞ」
「………分かりました、食べます、食べますともよ!」
フライを素手で鷲掴みして口の近くへ持っていく、少し顔を顰め乍らええい、ままよ!と口に放り込み水で流し込む。