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この小冒険のオチ。
件の人魂は、弐栞の言うところによると、学校から少し離れた岬、そこに建つ灯台の光が、校舎内を上手く反射し、2通りの光となり、校門の前の高さ1.5m程の位置で立体的に交わっている、ということらしい。
2方向から光が入るので、人間の脳は、それを一つの立体と認識し、目の前に人魂が現れるように見える、というからくりだ。
「ん?原理は分かったけど、あの岬の灯台って動いてたっけ?あそこはもう稼働してない廃墟だった気がするし、夜に光ってたら、ここでの生活も短くないし、僕でも気付くと思うんだけど」
「細かいことは気にしないの。それに、全部謎を解いちゃってもつまらないでしょう?」
「そういうもんか?」
「そういうものよ」
「あ、ところで、お前いつから後ろにいたんだ?家から尾行してた訳じゃないだろ?」
「そりゃそうでしょ。誰が好き好んで日向瀬君を尾行するのよ」
さいですか。
「私の家って日向瀬君の通学路の途中にあるのよ。気付かなかった?」
気付いていなかった。
いや、一緒に登下校していた訳でもないし、知らねぇつーの。
「部屋の窓から道を監視していて、日向瀬君が通った時に、窓から外に出て、尾行を・・・あっ」
「尾行してんじゃねえか」
首に手刀が飛んできた。
照れ隠しが洒落にならない女だ。
にしても何故窓から・・・。両親に気を遣ったのかな?ちなみに僕は堂々と(こそこそと)玄関から家を出た。
「とりあえず、一件落着、かな」
「そうね」
長話をしていた自覚もなかったが、僕らの帰路の先には、もう気の早い太陽が姿を見せていた。
薫る風に背を押され、僕らは2人並んで朝の陽へと、明日の日常へと歩いていく。
この後、弐栞は、何故か玄関から堂々と帰宅し、ご両親に大目玉を食らったそうだ。
三つ子の魂は、まだ、生きて漂っているらしい。
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――――「みつりソウル」完
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