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【SS】理狂い / 129

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ちゃむ 2018/03/25 (日) 01:06:46

私達とどこか、いや、何もかもがズレているのかもしれない彼女を、今まで私達は何度も理解し分かり合おうとしたが、何度やっても同じことだった。
彼女の思考、感情を理解するのは私達にはできなかったし
彼女に私達を理解してもらうこともできなかった。

もの思いに耽っているといつの間にか喧騒は目前へと迫っていた。
ちゃむが突然階段を降りる歩みを止めた。
「じゃあ、最初に行く人をジャンケンで決めよっか

ジャンケン、彼女の口から出たその言葉にはまるで危機感も躊躇もなかった。
これから私達が警察達を能力(ちから)のままに蹂躙し、血祭りに上げるのは私が予知能力なんてものを以てしなくてもわかった。
私の脳裏に刻まれた経験がそう予感させている。
私はこれまで何十人もの民間人を殺した。
その一人一人を殺した瞬間、感触、後悔が私の手に焼き付いて離れなかった。
その命を摘んだことは果たして私達の望みを叶えるために必要だったのか、そんなことはいつしか考えなくなっていた
が、どうしても人を殺すことに慣れることだけはできなかった。
私はいつも事を終えた後も平然を装うことで仲間達に悟られぬようにしてきた。
今まで殺してきた人々に心臓を引っ張られるようなこの地獄のような苦しみを殺しながら私は日々を過ごしている。
ただ、今は、いつか、わたしの中の大切な喜怒哀楽の感情の一つ一つが失われないか
いつか、目の前の赤いフードを被り無邪気な笑みを浮かべるこの女のようになってしまわないか
それだけがただ、心配で堪らなかった。

「それじゃあ、いくよー」
「ジャンケンポン!」
勝負は一瞬でついた。
私はジャンケンに勝利した、負けたのは彩奈猫だった。

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