伯林聖杯戦記0話~0.5話sideSkorzeny
2020/09/04 (金) 19:14:14
1945年3月ドイツ某所、とある駅。
「ったく、上はなに考えてるんだかな……」
オットー・スコルツェニー、今はウォルフ博士と名乗る男は何度目かも分からない愚痴を吐き捨てると列車へと足を踏み入れた。
同時に出発を告げる汽笛が鳴り、列車は動き始める。
戦線から近い場所に生きている交通機関があったのは奇跡的だ。
……列車の名前も覚えていないが、ベルリンへと行くと言うなら異論はない。
しかし、この列車は変な客が多かった。
先程すれ違ったストリッパーのような変な赤い服を着た褐色の女は人とは思えない雰囲気だったし、戦時中にも関わらず学生気分の抜けていない騒がしい一団がいたのだ。
まぁいい、と気分を変えて別の客車、二等客車へと移る。
そもそも本来であればスコルツェニーはドイツ東部で部隊の指揮を取っている筈だった。
それが急遽ベルリンに向かうことになった原因は数日前スコルツェニー宛に届いた命令書だ。
総統ヒトラーによるスコルツェニー以外開けてはならないと記されたそれにはこう書かれていた。
『至急ベルリンへと出頭せよ、これは総統指令である。尚、ベルリンへ行くことは誰にも知られてはならない、誰にも見つかってはならない』
「つい先日、ハンガリーでの攻勢に失敗して中央軍集団が壊滅して目の前にソ連が迫ってるこの状況下で?遂に我らが総統閣下はイカれたのか?」
しかし、命令は命令である。
部下に一時的に部隊の指揮を任せると準備を整え、変装をすると生きている交通機関を探し、それに飛び乗ったのだ。
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