1945年5月、欧州での大戦はドイツの敗北と言う形で終結した。
連合国は残った大日本帝国との戦いの終わりも間近と見ており、『次』に向けて動き出していた。
後にペーパークリップ作戦と呼ばれる技術者のスカウト、ドイツの遺産の奪い合いが水面下で後に自由陣営と呼ばれる米英とソ連の間で繰り広げられ始めていた。
1946年7月ドイツ、ニュンベルク、捕虜収容所。
捕虜収容所の廊下を前後と両脇を兵士に固められた男が歩く。
過度な程警戒している両脇の兵士とは裏腹に
男は散歩でもしているかの様に緊張感がなくリラックスしていた。
男の方には頬に傷があり、リラックスした上機嫌な表情でも厳つさを隠しきれてはいない。
前方の兵士が足を止める。
そこは尋問室と書かれた小さな部屋の前。
「入れ!」
「おいおい、随分乱暴じゃねぇかよ。捕虜虐待か?」
両脇の兵に急かされて押し込めれるように尋問室に入れられる傷の男。
目の前には机と椅子。男は慣れた様子でふてぶてしく椅子に腰掛けた。
「で、今日はなんだ? グライフ作戦の件ならお互い様って事で話が付いたろ?」
尋問室の奥、自身を監視している者に向けてわざとらしく大声を上げる。
そこで向かいの扉が開き、何人かの男が部屋に入ってきた。
「……オットー・スコルツェニーだな?」
一人の男が傷の男、オットースコルツェニーに相対するように椅子に座ると話し掛ける。
「誰だ、あんたら? いつもの担当じゃないな」
先程よりも警戒の色を露にしてスコルツェニーは問い掛けた。
「アメリカ海軍情報部P課所属、フランク・H・シンドー中尉です」
スコルツェニーに相対する男は如何にもといった軍人の風体だ。軍服はアメリカ海軍の青い軍服。
名前や顔つきからして東洋人の血を引いているのだろうか。
「海軍情報部P課、噂のデルタグリーン((海軍情報部P課通称デルタグリーン。とある事件を経緯に設立されたアメリカ軍の対神秘部隊、詳細は[[デルタグリーンについて>フランク・H・シンドー]]参照))か。カロテキア((カロテキア、ナチスドイツのオカルト特務機関。独自の指揮系統を持ち、欧州で暗躍していた。))の連中と派手にやり合ったらしいな。聞いてるぜ。そっちもデルタグリーンなのか?軍人っぽくはないが」
スコルツェニーはオカルトについては殆ど専門外だが、カロテキアとデルタグリーンについての噂とその戦闘については聞いた事があった。
興味深そうにシンドーの隣に立っていた奇妙な髪型の男に問い掛ける。
「いや、俺は違いますよ。俺はイギリス軍軍属のタイタス・クロウ、暗号解析なんかをやってた」
シンドーの隣に立っていた奇妙な髪型の男が名乗った。
こちらは軍人というよりは研究者かさもなくば探偵が似合いそうな若者だった。
「そりゃどうも、今更何が聞きたいんだ?」
首だけかくんと動かしたスコルツェニーは相変わらずの不遜な態度で言い放つ。
答える気はないと態度で示していた。
「単刀直入に言おう、ベルリンでの聖杯戦争について聞きたい」