アルス/XXXI :告白
2020/07/31 (金) 00:51:44
正確には、恐る恐るだったかもしれない。
生前はこれで子供ができてしまうと教えられていたし、召喚後に因果関係は無いと学んでからも誰とも交わすことは無かった。
だから、気が急いて失敗したら―――と思い、パーシヴァルは慎重に、結果としてとても長い口づけを交わした。
ゆっくりと距離を離す、再び視界に映った互いの表情が茹で蛸のようになっていて、恥ずかしい反面少し可笑しい。
もしかしたら、これまでのどの戦いよりも緊張したかもしれない。そんなアルスの体からふにゃと力が抜けた。
「そ、そうか。僕……余は!嬉しく思うぞ!」
「ふふっ。言葉遣い、今直しても遅いですよ」
「あぅぅ……」
「いいんです。いいんですよ。そんな所も私は好きなんですから……」
そう言って、パーシヴァルは体重を預けてきたアルスの身体を抱きしめる。
彼の暖かい体温を全身に感じる。それがじんわりと自身に染み渡り、心に溜まった波を和らげるように感じた。
強く求めるように抱き続ける。そうでなければ、きっと溜まった波はこの身を裂いてしまうだろうから。
共に体温を―――2人の「好き」を分かち合いたいと、そうパーシヴァルの心は求めていた。
だから、このまま時が永遠に止まって欲しいと―――
時?
我に帰ったように、今の時刻を予測で割り出す。……深夜過ぎ、というか抜け出た時点で刻限越えである。
「――――――早く戻りましょうアルスくん!これ絶対バレます!!説教では済まないやつです!!!」
「む、む!?いや待たれよ!裏庭から忍び込めばあるいは……!」
「そそそそうですね!?為せば成る!とか言いますし!ゆっくり、ゆっくり行けば大丈夫です!!」
その後、自宅屋敷へのスニーキングは速攻で見つかり、メイド長にこってりと叱られ正座させられた。
fin
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