アルス/XXXI :告白
2020/07/31 (金) 00:51:15
沈黙。しかし、戸惑いの中に、答えを見出しつつあった。
何もない日常の中なら、きっぱりと否定していたかもしれない。
生まれて間もない頃から10年以上世話をして、成長を見守ってきた。その在り方は姉弟か、もはや親子に近い。
そんな自分が、アルスを「そんな関係」と認識することは、きっと不可能だろうとパーシヴァルは確信していた。
そう、何事もなかったならば。
パーシヴァルの脳裏に浮かぶのは、10年に渡るアルスと過ごした日々。彼の日常と―――戦いの中の姿。
負傷した彼が弱々しく握り返した手が、今は自分の手を強く握りしめている。
挫折に打ちひしがれた小さな姿が、今は少しだけ大きくなったように映る。
あの時、
心身を子供に返した時、黄昏に照って輝いた翠の眼が、今は星の煌めきを抱いてこちらを見つめている。
天使様のような彼の輝きから目を離せなかった。その本当の理由が、今なら分かる。
アルスくん、変わったんだ。
もう小さな子供ではない。可愛い弟のような存在という自分の定義を飛び越えて、これから、きっと己の王道を見つけていく。
そして、今は弟でも王でもない。彼も、私も、唯一人として向かい合って―――鼓動を、とても近くに感じている。
なんだ。
ずっと前から、答えは決まっていたんだ。
握られた手を強く握り返し、胸元に寄せる。同時に少し身を屈めて、少年と目線を合わせた。
そして、
「うん」
「私も、好きだよ。アルスくん」
そう呟いて、
静かに、互いの唇を重ねた。
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