2月14日。
世間ではバレンタインと称されるこの日は、一言で表すならば「地獄」だ。
女性は恋する相手にチョコをどうやって渡そうかと苦悩し。
男性はせめて1個はチョコが貰えるようにとひたすら祈る。
そんな戦いの日でありながら__________
「ロン。国士無双13面……ダブル役満って言うんだっけか?」
__________あろうことか、逆神アカネは。
そんな色恋の戦場とは程遠い、酒と煙草の臭いが充満する雀荘にて、別の地獄を作り上げていた。
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事の発端は今からおよそ30分前。
バレンタインをチョコ0で終える哀れな野郎どもによる麻雀大会のメンツを集めていた範浄レオンは、
以前麻雀をしたことがないと言っていたアカネに今度教えてやると約束をしていたことを思い出した。
流石にむさくるしい男衆と共に夜を超えるのはアレだと思っていたレオンはこれ幸いと連絡し、
午後になる前にチョコを配り終えていたアカネはその誘いを受け、難波の街で合流して雀荘に入店した。
そうして開かれた麻雀大会、アカネという花が添えられたことで野郎どものテンションは爆上がりし、
そんな賑やかな雰囲気が嫌いではないアカネもまた普段なかなか見せない笑みを浮かべ、
夜中の9時でありながら非モテ男のひしめき合う店内は先程までのどんよりムードを吹き飛ばし盛況していた。
麻雀初心者であったアカネに基礎を教えるため、最初は隣でアドバイザーをしていたレオンだったが、
ある程度アカネがルールを覚えると自分も卓につき、適当に酒を注文しながら勝ったり負けたりを繰り返し。
同卓していた男の一人が、折角だから賭け麻雀も体験してみようぜと言いだした辺りから流れがおかしくなった。
流石に未成年であるアカネは賭けなくていいことになったものの、酒が回り始めたレオンは調子に乗り、
「勝ったらお兄さんからお年玉をやろう」
と言ってしまったのが運の尽き。
未成年でありながら当然のように酒を飲んでいたアカネは煽り耐性を著しく低下させており、
周囲の男たちが正月は先月だろうがーなどと突っ込んでいる中一人静かに酒で湯だった頭を戦闘用に切り替え、
いざレオンを親に始まった5戦目の南三局、レオンの対面であるアカネが起こしたのが冒頭である。
通常国士無双は役満の32000点なのだが、十三面国士無双はダブル役満の64000点となる。
その上南三局の親はアカネであり、直撃を受けたレオンが支払う点数はなんと5割増しの96000点。
当然ながらレオンに受けきれる訳が無く、余りにも痛すぎる一撃はレオンの財布を無慈悲に毟り取っていった。
そうして一人戦闘不能となり、また鮮やかなロン和了りを見れたことで皆満足したのか、
むさくるしい野郎どもと一人の花のような鬼による麻雀大会はバレンタインの日を終える前にお開きとなった。
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