神戸某所、新年初の電磁嵐が通り過ぎた跡。
「電磁嵐の中で新しい年を迎えた人って、わたし位だろうなぁ……」
ボロボロの恰好で装甲バイクを押し、とぼとぼと元は道路だった筈の道を、わたし……石上ツバメは独り歩く。
大晦日、急に入った主人の無茶振りを受けて調査に飛び出したは良いが結局は手掛かりらしい手掛かりは見付からない。
おまけに、うっかりミシマタワーに近付きすぎたせいで大小様々な無人兵器のお出迎え。
『殺し』ても『殺し』ても止まらない無人兵器ラッシュに枝を大量浪費し、「これはダメだ」と撤退したら、今度は電磁嵐が目の前に。
追いかけてくる大型の無人兵器を撒くために嵐の中へと強行突破したは良いが、なかなか止んでくれず見事に足止めを喰らい……そして、この様である。
―――― 新年早々いきなり厄日か。
疲れで重い足を止め、重い溜息を地面に落としてからバイクに寄りかって薄暗い空を見上げる。
磁気嵐で時計が壊れたせいで正確な時間は分からないけど、確実に日付は変わっている。
それもきっと、一時間や二時間程度じゃない。いくらわたしでも、それ位は流石に分かる。
今、神戸で動いているのはわたしや無人兵器達ぐらいで、みんなは眠っている時間帯だ。
「アルメアさんには悪い事しちゃったなぁ……」
貴重な友人との約束を自分の都合でキャンセルした事を思い返す。きっと、彼も今頃はぐっすりと眠っているだろう。
約束があるんだし、『せっかくなんだしこっちの風習に合わせて三日まで休みましょうよ』と言いたかったが、クリスマス休暇を取ってしまった手前そう言う訳にもいかない。
むしろ、その辺りの都合を考えておかなかった自分のミスだ。後で埋め合わせをしないと。
バイクに寄りかかり、空を見上げながら空転し始めた思考を打ち切ろうと首を振り……
ふと、空の向こう……東側を見る。空はまだ暗い?いや、少しだけ白み始めている気がする。
今さっき逃げ帰ったばかりの塔の向こう側。その空の色が微妙に変わっているのを感じ取って、わたしはバイクに寄りかかる姿勢を正す。
あのミシマタワー越しに見る朝日は、ちょっと風情……って言うのかな?ともかく、そう言うのがありそうな気がする。
「これ位の役得はあっても、別にいいよね」
身体を休めるついでに、ここで朝日を眺めてから戻ろう。そして戻ったらぐっすり寝て、それから……。
「天使ラーメン、やってるかなぁ」
開いていたら、近い内にやろうと思っていたレビヤタンに挑戦してみよう。
今なら、何だか食べきれる気がする。